高橋洋一『大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実』(SB新書)

 森友学園の籠池夫婦の補助金詐欺の疑いでの逮捕で、久しぶりに森友学園問題を再考したときに、本書はとても役立った。森友学園問題とは、本書によれば、日本の官僚制の「弊害」であることが、具体例を以て示されている。

 現状では、そもそも森友学園問題も加計学園問題もいったい何が「問題」なのか、いっさい具体的な根拠を示すことなく「疑惑」だけが無責任に広まっている。そもそも「森友や加計が疑わしい!」というならば、“何が”“どうして”疑わしいのかを明示しないでは、なんの議論にもならない。そして常にこの点を曖昧にしたまま“疑惑が解決されてない”というのは、単に「疑惑」を持った人が論理的に破綻している、どーしようもないレベルを示しているだけである。まさに嘆かわしい幼稚な現状なのだが、本書はその嘆かわしい現状を放置せずに、森友学園問題における論点が、官僚制に機縁していることを明示している点が新しいだろう。

 そして加計学園問題も同様であり、特に規制緩和地方自治の自由に反対する勢力(官僚や既得権団体)の抵抗が、事実と論証でよくわかる。

 繰り返すが、「疑惑」を持つのは結構だが、それを議論までに成長するのならば、「疑惑」の根拠を呈示する責任は、疑惑をむけられた方ではなく(それは悪魔の証明と同じ)、「疑惑」を持った方にある。その基本を理解しない知的に幼稚な人は本書を読むこともしないだろう。それだけ問題は根が深いが、もし心ある人はぜひ本書を手にとることを進める。