飯田泰之・木下斉他『地域再生の失敗学』

 地域経済・社会をどのように活性化するのか。この問いに、1)地域内の内需活性化、2)地域財政の仕組み、3)文化的創生、4)過疎地域問題、5)現場の行政責任者との対話 といった切り口から、飯田さんがナビゲーターになって切り込んだ快著です。すでにいくつもの高い評価が与えられていると思いますが、特に木下さんと飯田さんの対談が歯車があっていてまた僕自身同意するところが多かったです。特にご当地キャラB級グルメなどの「経済効果」は僕も以前からこの種の推計は怪しいと主張していたので激しく同意です。

 さらに地域経済はいわば統一通貨をもった経済圏と同じで、「貿易黒字」を生み出すことが重要という指摘にも深く賛成ですし、それゆえに日本経済全体をよくする政策(リフレ効果)と地域の経済活性化をどうするのかを分けて考えていくことは重要だと思います。後者の理解のために地域別の産業連関表を活用してターゲット戦略をたてなくてはいけないのですが、そのような戦略的思考には各自治体もまた地域住民も慣れてないのが現状です。またシャッター通り対策としての相続税。固定資産税の見直し&強化の提言は参考になります。

 いろいろ刺激的な著作なので日本の地域経済だけではなく、日本経済全体に関心をもつ人にも必読でしょう。

地域再生の失敗学 (光文社新書)

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