最近の時事問題を考えるためのブックガイド(2015年秋)

集団的自衛権や平和安全法制について

ベストな本は小川和久氏の『日本人が知らない集団的自衛権』だ。Q&A方式で丁寧に解説されている。法解釈から政策レベルまでわかりやすく具体的なので、集団的自衛権を認めることや平和安全法制に賛成・反対と頭からきめることなく、まずはこれくらいの基礎知識は知りたい。特に集団的安全保障と集団的自衛権の違いなど基礎的認識がしっかりしてないと、平和安全法制の問題は議論することもできないので。

日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)

日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)

小川氏の本と同時に読むべきなのは、佐瀬昌盛氏『いちばんよくわかる!集団的自衛権』がいいだろう。また批判派の人の見解では簡潔だが、間宮陽介氏の論説「「平和安全法制」の欺瞞」を収録した『現代思想 総特集「安保法案を問う』を読むのが時間の短縮につながる。

いちばんよくわかる集団的自衛権

いちばんよくわかる集団的自衛権

また安全保障問題は単に憲法解釈の問題だけではなく、また客観的なデータで議論されなければならない。特に経済的側面に焦点をあてたこの『コストを試算! 日米同盟解体』は賛否があっても具体的に論じるベースを提供していていい。手元にぜひおきたい本だ。

コストを試算! 日米同盟解体 ―国を守るのに、いくらかかるのか―

コストを試算! 日米同盟解体 ―国を守るのに、いくらかかるのか―

歴史認識問題もこの夏に話題沸騰し議論が重ねられた。以下の細谷雄一歴史認識とは何か』は国際的な視点を全面に打ちだした良書だ。

日本経済全体をざっくり歴史的な視点でとらえる最新の本として原田泰氏の『反資本主義の亡霊』がいい。またギリシャ危機については、竹森俊平氏の『欧州統合、ギリシャに死す』、また世界経済をむしばむ政策思想である緊縮病の弊害を検証したスタックラー&バス『経済政策で人は死ぬのか?』、米国を戦争に走らせないためにはどうしたらいいのかを考えるヒント満載のスティグリッツ&ビルムス『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』もいまの現状認識を得るために必読だ。

欧州統合、ギリシャに死す

欧州統合、ギリシャに死す

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

世界を不幸にするアメリカの戦争経済  イラク戦費3兆ドルの衝撃

世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃

中国の対外軍事戦略を考えるための必読書はなんといっても: トシ・ヨシハラ, ジェームズ・R・ホームズ『太平洋の赤い星』と巻末の山形浩生さんの解説を読むべき。

太平洋の赤い星

太平洋の赤い星

最近、しばしば民主主義や選挙もしくは投票についての議論がさかんである。以下の4冊の本はこれらの議論を考える際に参考になる。

帝国を壊すために―戦争と正義をめぐるエッセイ― (岩波新書)

帝国を壊すために―戦争と正義をめぐるエッセイ― (岩波新書)

人間の安全保障 (集英社新書)

人間の安全保障 (集英社新書)

アイデンティティと暴力: 運命は幻想である

アイデンティティと暴力: 運命は幻想である