サイモン・クズネッツの『戦後の経済成長』(原著1964年)をななめよみしているけど、当時の東西冷戦という文脈ではなく、クズネッツ自身は(分裂的な)ナショナリズムの伸長を警戒している。経済成長の成熟過程で、国民国家同士のナショナリズム的な対抗関係が激化していく可能性を指摘している。
クズネッツ仮説として知られているのは、経済発展が進むにつれて産業構造の変化を通じて、所得の不平等度が低下していくものといわれている。だが、クズネッツ自身のこの講演録を読むと、むしろ経済発展の進化とともに国民国家(この枠組みは経済発展のために不可分)同士の分裂的ナショナリズムに懸念。
そしてクズネッツは、分裂的ナショナリズムと経済発展の成熟とが楽観を許さない状況になるだろうとし、安易な見方を許していない。ちなみにこれは直東西冷戦だからではない。クズネッツはこの厳しい見方から、経済はよりひろい政治や制度的な枠組みの中でとらえる必要がでてくると警告している。
おそらくピケティが何万部も売れても、多くの人はクズネッツ誰? と買った人たちも思っているだろう。読んでないと思うので。いま書いたのは、『21世紀の資本』に「敵役」としてでてくるクズネッツ仮説のクズネッツの話。
- 作者: サイモン・クズネッツ,山田雄三,長谷部亮一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1966
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