中野剛志『国力論』ほか

 う、三冊(『国力論』『恐怖』、『ナショナリズム』)買ったので、週末読もうとしたらこのエントリー読んじゃった。

 http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20090508/p1

 いろいろするどい指摘が並んでいるけど、個人的にビビときたのがこれ。

 *何で英語圏でも広く読まれている村上泰亮について論じないの? そもそも著者の政策提言は村上の焼き直しの域を出ない。産業政策・幼稚産業保護論とか。あとマイケル・ポーター『国の競争優位』も無視。

 ポーターというのは結構、面白い人で、竹内弘高氏との共著『日本の競争戦略』では、日本の産業政策の失敗を実証的に論じてもいて、産業政策批判のソースとしても利用できたりする。

 ところで稲葉さんところで触れられてないから少しコメントすると、村上的というならば、中野氏の本の中にロストウが触れられたないかどうか興味がある。村上がナショナリズム的なもにを経済学に取り込む契機になったのは、どうも昭和36年(1961)に出た『経済成長の諸段階』の翻訳にあったように思える。そこにチャーマズ・ジョンソンの『通産省と日本の奇跡』での日本の「理論・実証」的な分析が加わり、村上「理論」の大きな骨組みができた感じ。

 いまやロストウなんていっても誰も読んでないかもしれないけど、ロストウを抑えておくと「帝国」だなんだかんだいってる人たちも実は米ソ対立のイデオロギーの残滓を引きずっているだけの黄泉がえりだったりすることがわかるかもしれない。