高橋さんの専門は実は安全保障論だった、という意外な冒頭から、そもそも日本のマスコミや一部の論者のように「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を分けることがおかしい(両方とも「正当防衛」のアナロジーで考えてみるとそのおかしさに気が付く)という刺激的な指摘をしています。僕もこの両者がなんで分離しているのか、理屈の上で変な議論で、それを「集団的自衛権」反対論者たちは、極論的な事例で誤魔化しているようにしか思えないのです。
「国内法における個人の正当防衛という延長線上に、国際法における国家の自衛権がある。この当たり前の常識を理解している人が日本ではきわめて少ない」
さらにこの「集団的自衛権」問題を混迷させているのは、相変わらずの日本の官僚制度の弊害でもあると高橋さんは指摘しています。要するに内閣法制局が事実上の立法と司法を超越した権限を行使していると批判しています。
また高橋さんの師であるマイケル・ドイル氏からの教授(日本の平和憲法が特殊ではないこと、自衛権の行使を妨げる議論がおかしいこと)を紹介しています。そして他国からの占領支配などの武力攻撃について、国連の安保理で解決するのが最善だが、それに間に合わない&対処できない事例を想定して、「日本は他国と「正当防衛」をともに行える関係を構築すべきだ」としています。
特に高橋さんはNATOを念頭にして、日米の二国間同盟だけでは対処できない事例が生じたときに、アジアの関係諸国(この場合は対中国での摩擦を抱えている国々)との同盟関係構築の重視を主張しています。
高橋さんのこの論説はかなり面白く、今後の僕の考える方向の基礎になりました。
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