常見陽平『「できる人」という幻想』

 過去四半世紀ほどの日本の就職市場を、入社式の経営者の言葉の変遷、働き方の社会的流行語からの分析、四半世紀に「日本型経営」といわれる特質の変化、「グローバル化」についての就職市場における無責任な利用の変遷、そしてキャラ化して実体に乏しい「起業家」「コミュ力」などに焦点を合わせて論じている。常見さんらしくわかりやすい文章とときどきギラリとする指摘で軽快な読書を楽しむこともできる。

 最近、ネットなどでイメージを高めている「起業家」のキャラ化に僕も関心を持っている。常見さんと同じく批判的な意味で。与沢翼氏や家入一真氏らを本書でも批判的に検討しているところが個人的にはツボ。あと猪口邦子氏の若きころのエピソードも面白い。いろいろな小ネタをはさみながらも、就職や働くことを中心にした、「強さのインフレ」を求めるしんどい社会を批判的にみる視座は相変わらず健在である。