高橋洋一『財務省の逆襲』

 高橋さんの財務省批判の近時における集大成の感がある時論の書です。現段階で日本経済が順調に回復してきていますが、だがその途中に生じた様々なかく乱もこれからの不安も、マクロ経済に関するかぎり、かなりその原因を財務省という日本のトップ官庁の権益によっている、それが高橋さんの見立てである。もちろん本書にはマクロ経済以外にも、ミクロ経済的なさまざまな政府≒財務省の失敗が追求されている。

 以下では僕のメモ代わりに、主にマクロ経済についてだけ書いておく。包括的ではまったくないので、詳細は直接読まれたい。

財政支出は景気下支えにならない(ただし強力な金融緩和を伴えば効果あり)

名目GDP成長率と名目公共投資伸び率には相関関係なし
公共投資[公的固定資本形成)と純輸出は補完関係(前者が減少すると後者が増加する。それゆえ両方足すとGDP日6〜8%で安定)があり、マンデル・フレミング効果を立証。
マンデル・フレミング効果のキーである円高は金融緩和で対処できるので、金融緩和があれば公共投資は景気の下支えになる。消費税増税はやめた方がいいが、「しかし、財務省が仕組み、政治的にまともでない消費税増税をやるならば、それをできるだけ中和し経済に悪影響を出さないようにするのも、やむをえない。庶民から増税してそれを大企業などの既得権者に族議員、官僚がばらまく姿はどう考えても悪魔の選択であるが、経済の腰折れを防止するためには背に腹はかえられない」。

消費税3%恒久措置 ⇔ 少なくとも7兆円の補正予算を三年間やるべき(高橋案)