歳入庁、マイナンバー制に関するメモ

 高橋洋一さんが、以下のように今日つぶやかれていて、それで歳入庁、マイナンバー制についてメモを作成。

ベーシックインカムなどのふわったとした言葉を連呼する人より再分配政策の具体化に熱心と本人は思っている←所得再分配政策が貧弱な理由 国民総背番号と歳入庁創設が急務 - ZAKZAK http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130418/dms1304180712000-n1.htm … @zakdeskさんから

https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/368588809425784833

まず当該の高橋さんの論説「所得再分配政策が貧弱な理由 国民総背番号と歳入庁創設が急務」では、高橋さんは日本では再分配政策の意識が希薄(一億総中流幻想が生きていたせいではないか)として、その再分配政策がよりうまく機能するための制度として歳入庁の創設と国民総背番号制マイナンバー制が、この論説後に国会で成立し、日本ではそれの一形態になった)を主張した。

所得再配分の基礎となるべき所得・資産捕捉が十分にできていないからだ。所得再分配を主張する識者も、こうした基礎データがないことを知らないのだろう。政策として意味のある発言はほとんどなく、抽象的な議論しかできていない。国民総背番号と歳入庁創設をしないと、キチンとした所得再分配論議すらできないのが実情だ。(略)本来であれば、消費税増税法案の中にこれらを取り込むべきであったが、番号制もやはり不徹底だし、歳入庁についてはまったく作る気もないありさまだ。国民総背番号と歳入庁創設の後には、給付付き税額控除を導入して、本格的・包括的な所得再分配政策を行うべきだ。税率、課税最低限度その他は制度を作った後で広く国民で議論してもいいので、早く仕組みを作らないといけない。

 つまり、消費税増税社会保障目的であるという財務省の言い分を信じても(実際にはこの消費税を社会保障目的にするということも大いなる欺瞞である)、そもそも税率をあげることが再分配政策の強化につながらない。なぜなら再分配政策を効率よく実現できる制度が不在だからだ。これは高橋さんの消費税増税問題への別の視点からの批判にもなっている。

 なおさきほど社会保障目的としての消費税増税は欺瞞であるとしたが、社会保障給付には当然に保険料が存在する。消費税率を上げるのでなくこの保険料を上げた方が受益と負担の関係が国民にも理解しやすく制度的にも効率的だ。それでも不足すれば所得税ファイナンスすればいい。なぜ消費税を社会保障目的にしたいのか? それは実際には「したくない」からではないか?

 最近の以下の記事では、消費税増税は単なる公共事業への増額にまわり、それは自民党の支持基盤を潤す「ムダ」の産出に貢献するだけかもしれない。

消費増税分で公共事業? 社会保障目的、怪しく
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013081602000137.html

 さて高橋さんの歳入庁論説としては以下のものも重要。
「安倍政権は六年前のリベンジを果たし、歳入庁を実現できるか?マイナンバー法案成立への二つの懸念」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35766

ここでは高橋さんの主張は以下のようなもの。

筆者は、国民総背番号とともに、国税庁と年金機構徴収部門を統合したいわゆる「歳入庁」によって、税・保険料の徴収漏れが10兆円程度期待できるといってきた。アメリカのように、確定申告では社会保障番号を記入させ、そのうえで銀行口座開設のときにも社会保障番号が必要とする。怪しい申告書についてその社会保障番号を金融機関に照会すれば当座預金の資金トレースが簡単にできて、脱税を見つけるのは今より格段に高くなるだろう。これは、元税務署長の経験からきている。
こうした不公平の是正は、増税(税率を上げること)の前にやっておくべき税の鉄則である。

これは先の論説の税の効率的徴収のための制度的枠組みとしての歳入庁、マイナンバー制の必要性の主張だ。

しかし歳入庁創設には1)財務省の反対がある。

財務省国税庁を意のままに使いたいから、歳入庁に反対だ。今のままなら、国税庁の幹部ポストを押さえ、主要国税局長や東京国税局の調査査察部長らの重要ポストも財務省が握れるからだ

2)またマイマンバー制のシステム構築の無駄が制度設計の足かせになる可能性を論説の中でいくつかの事例をあげて説明している。

ところでマイナンバー制度の運用スケジュールと、高橋さんがあげた以外の論点を以下の日本経済新聞の記事がまとめているので参考までに。

税の不公平、マイナンバーでも 所得把握に抜け穴http://www.nikkei.com/money/investment/mandi.aspx?g=DGXZZO5695569004072013000000&df=1

 歳入庁をつくるためだけに、財務省と政権できる前から相当の覚悟で闘う準備をしないといけない。まず国民にその利益を喧伝して知ってもらうこと。日本の社会保障制度の不備と消費税増税への無意味な傾斜、財政赤字問題などの根源も、歳入庁創設を拒む財務省にある。いわば歳入庁は日銀法改正と同じ位置。
 歳入庁つくるだけで政権のひとつつぶすぐらいの覚悟がないと無理。でもやらないと日本の社会保障制度は、財務省の手の内で、わずかな余剰を既得権(その中には生活保護を声だかにいう市民活動家たちも組み込まれている)を多かれ少なかれもった人たちで奪い合うゼロサムゲームから抜け出せない。
 「財政再建」「国民の借金をなくす」と主張している財務省こそが最大の「ムダ」の発信地だってことを。この欺瞞を考えることができるかどうかでかなり日本の風景変わる。

参考リンク

民主党政権時代の歳入庁設置の覚書
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/5daijin/240612/siryou.pdf
みんなの党他の歳入庁設置法案要綱 
http://www.your-party.jp/file/houan/183/130416-01a.pdf