内藤陽介『喜望峰 ケープタウンから見る南アフリカ』(切手紀行シリーズ)

 内藤さんから頂戴しました。どうもありがとうございます。内藤さんの切手紀行シリーズもいつの間にか五冊目。今回は南アフリカ喜望峰を中心にした郵便学の世界が展開されてます。

 まず南アフリカの歴史が、社会、政治、経済の方面から(内藤さんの著作では)毎度のことですが、実にわかりやすく整理されています。僕はたまたまアマルティア・センの本を読んでいて、マンデラの歩みに興味があったのですが、その話題ももちろん豊富。特にマンデラがロベン島に収監されていたときに、世界各国でマンデラ支援のための切手が発行されたが、マンデラの肖像が収監中一切公表されてなかったために、国ごとにバラエティに富む、という記述はへ〜と感心してしまいました。またロベン島をユネスコの“負”の世界遺産にする際に、日本が積極的に動き、これは戦前の人種差別撤廃の動きの伝統を引き継ぐものである、という示唆を内藤さんが書いたところは、深く同意しました。

 さらに本書の後半では、日本と南アフリカの関係が捕鯨など遠洋漁業の側面から丁寧に解説されています。GHQなどの戦後政策や国際的なシビアな動向が、本書ののんびりした南アフリカの風景と切手と対照をなすかのように描かれています。

 もちろん内藤さんは南アフリカでもアルコールを一杯飲んでご機嫌なはず! 本書からも明るい観光気分も十分に伝わる、喜望峰への必携の一冊ですね。もちろん当分行く予定のない僕も旅行気分です。豆知識やうんちくを語れるのもこの切手紀行シリーズのいいところですね。

喜望峰―ケープタウンから見る南アフリカ (切手紀行シリーズ)

喜望峰―ケープタウンから見る南アフリカ (切手紀行シリーズ)