先週末から、ユーロやドルに対する円高の進行をうけて政府と日本銀行が為替介入をするのではないかというニュースが続けて報道されている。しかしこの種の為替介入は、日本銀行の金融緩和を伴うものでないかぎり効果は事実上ない。
片岡剛士さんの新著『円のゆくえを問い直す』には、いまの円高の悪影響、そしてこの円高をどうすれば本当にとめることができるかが詳細にわかりやすく書かれている。すでに前半については先の紹介で書いた。また残りの部分は今度の片岡さんとのトークイベントの話題にできるので書くのを控えてたが、この為替介入については、ここで簡単に書いておく。
まず本書では、為替レートがどんな要因で決定されるかが解説されている。それは名目金利、予想物価上昇率、物価上昇率である。そしてこれらに日本銀行は金融政策を通じて効果を与えることができる。
では、なんで政府と日本銀行の行なう為替介入が効果がないのか? 片岡さんの本では図示して簡潔に説明している(図表は同書を参照されたい)。
「まず円売り・ドル買い介入を行う際には、政府は国庫短期証券(為券)を市場で入札発行することで円資金を調達したうえで、外貨の買入れ代金として円預金を市場に対して支払ます」。
つまりこれでは政府から同じ額の円が出て、また入るだけで、まったく市場の円は増加しない。円が市場にまわらなければ当然に、為替レートに影響を与える3つの要因は変わらない。つまり為替介入は制度的に無効なのである。
では、このとき日本銀行は何をしているか? それは単に政府が為替介入時に行う円資金を一時的に調達する役割しか行わない。最終的には政府は上に引用したように、市場から為券を調達する。つまりつなぎの役割しかない。「一時的」な調達が終われば円はまた日本銀行の元に戻る。政府と日本銀行の間でも円はまったく増えない。
上の結果は外為会計にはとりあえずドルが積み増しされる。国庫短期証券は市場にとっては実においしい資産なので市場の取引関係者は喜ぶだろう。ただし、円高はまったく是正されない(ここらへんの市場関係者にとっておいしい話や外為会計の話の詳細は、私たちの『日本建替論』に詳しい)。
このような国民経済からはまったく意味をなさない為替介入ではなく、片岡さんの著作にあるような金融政策の活用こそが、円高を是正できる。しかし、その手段を日本銀行も政府も十分に理解しながらやろうとはしない。これは実に奇妙なことだ。あるいは無知なのかもしれないが、すでに2月14日のインメドの「効果」を目にしているだけに奇妙なのだ。この点はまた改めて検討したい。
円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)
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