菅財務大臣、円安発言と90円台半ばの為替レートターゲットの評価

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100107ATFL0706L07012010.html

「一時に比べて円高は是正されているが、もう少し円安方向に進めばいいと考えている」と述べた。そのうえで「経済界では1ドル=90円台半ばが貿易との関係で適切との見方が多い」と指摘した。「適切な水準になるように日銀と連携して努力する」

 個人的には円安介入は気乗りしない案だが、それでももちろんやらないよりやったほうがいい。ただ相当大規模にやらないと「適切な水準」にいくかどうかわからない。ただこれもまた現状で日本銀行がそれなりに緩和基調なので、事実上の非不胎化介入になるかもしれない。次回の政策決定会合あるいはそれよりも前倒しでなんらかの財務省日本銀行の協調があれば面白いことにはなる。

 ただ「適切な水準」が90円台半ばなのかというと答えはもちろんノ―だろう。スベンソンのイケダでもできる(?)流動性の罠脱出法を参照するまでもなくアンカーとすべき名目為替レートの水準は、1ドル120円前後ではないだろうか。それがおそらく1〜2%のインフレ目標と整合的だろう。

 例えば産出ギャップを25兆円くらいにして(高橋推計だともっと過大だが)これはいまのGDPの比率でいうと5%。1%の産出の拡大が5%の為替レートの低下(=円安)になるとして(クルーグマンの『復活だぁ』論文より)、90円をその産出ギャップ25兆円と対応する為替レートとすれば、だいたい110円台前後か。財政政策の効果が効いていると思われること、既存の金融緩和の分などを引けば多少はこれよりも高い水準でもいいかもしれない。もちろん厳密ではなくただ数字の遊び。ただいままでの長期停滞での名目価値の毀損を肝案すればもっと円安水準でもいいから120円台希望。120円台をアンカーにすれば効果は覿面。

 逆に90円台半ばをアンカーにするときわめて限定的でゼロインフレへの回帰すらおぼつかないかもなあ。