通貨の信認低下? 通貨の膨張の可能性が低い日銀の国債直接引き受けなのになぜ? 可能性は白川総裁の発言にだけ宿る

 自分ながらなんだかなあ、という2時間ドラマ並みのエントリーテーマではある 苦笑。まあ、これが日本銀行レベルなんだからしょうがない。日本銀行は直接引き受けできないと、現にしているのに詭弁を重ねて(ただし国会で最終的に認めたが)いたころから、総裁の言動がだんだん正常コースを外れてきたと思う。

 ところで高橋洋一さんが勧める日本銀行国債直接引き受けのスキームは以下に。ご本人が政権にかかわっていたころの経験から出た知恵である。これで財源が捻出できないというのは単に過去の予算書も読んだこともない人であろう。またそもそもこの手法は、既発債を利用しようとした戦前の日銀副総裁深井英五の発案したより穏当な(当時の日銀目線でだが笑)日銀直受けとほぼ同じである(実際には高橋是清案の新発債を引き受けた)。公的なスケジュールで決まっている国債償還に比較すると、高橋案は通貨の膨張をもたらすのではなく、単に通貨の収縮の可能性を防ぐだけである。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110524/plt1105241543002-n1.htm

実は、私はその会に招かれて復興財源の話をした。先方からの要望は「復興財源と特別会計剰余金・積立金」というものであり、既に成立している今年度予算書から資料を抜き出して、日銀引受、国債整理基金特別会計労働保険特別会計の3つの話をした。

 日銀引受は、今年度予算の日銀引受枠30兆円をフルに使うものだ。日銀引受は毎年行われているので、禁じ手とかいう人はまったく信用できないことを本コラムの読者はご存じだろう。今年度も12兆円の日銀引受が行われる。

 今年度、日銀の保有国債の償還額は30兆円なので、通貨膨張させない範囲で日銀引受が可能な枠は今年度予算で30兆円になっている。ということは現時点の12兆円との差額18兆円は日銀引受が可能なのだ。

 もし18兆円の建設国債(復興債)を発行しようとするのであれば、発行について赤字国債のような特例法も不要で、現行財政法の範囲内なので予算措置(補正予算)で発行ができる。その上で、市中消化の借換債18兆円を日銀引受として、その空いた18兆円で新たな復興債を市中消化できる。つまり、法改正ではなく衆議院での補正予算で基本的に可能な話だ。

 国債整理基金埋蔵金10兆円は復興対策に流用できる。この手法はこれまで11回も行われていて国債償還に支障は生じていない。日銀引受も国債整理基金も、通貨や国債の信認が失われるというが、これまで何回もやってきても一度も問題が起きたことはない。

 また労働保険特別会計でも5兆円の捻出はできる。これらをどのように使うかは政治家が判断すればいい。このような埋蔵金の発掘は民主党が政権を取る前に公約してきたものだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一

 公的スケジュールの枠内での修正(この修正で通貨収縮の可能性は防げる)さえも認めないというトンデモはただ単に論外なだけだ
 
 もちろん日銀総裁のいうように「不連続」な通貨の信認の低下の可能性はある。通貨膨張の可能性が低いスキームを、通貨の信認の低下であると何度も公的な場で叫んでいる人物、つまりいまや通貨の信認の低下については、通貨膨張の可能性が低いスキームを前にして叫んでいる総裁自身の発言がその最大の要因になりかねない。