最近の新卒市場をめぐる雑感ー雇用のミスマッチよりも「量だよ、量」

 今日の未明からTwitterの方で書いたものを余計なところ省いてただ掲載したもの

 いまの四年生の就職率低下は、雇用のミスマッチなので、中小企業の求人は多いとかいう人がいるが、あまりにも統計数字を鵜呑みにしすぎている。現場ではよく知られていることだが、実際の求人数は率になおせば大企業よりも多少ましなぐらい。例えば上武でも夏以降は求人数は劇的な低下の状況にある。ほかの大学も同様であろう。

いまのこの時期に「新卒の就職率をあげるのは雇用のミスマッチ解消」というほど現場感覚からずれた発言はないと思う。ないのだよ、求人自体が、決定的に。

もちろん早稲田とか慶應とか国立とかそこらへんはしらん。それだけが日本の大学ではなく、むしろそこらへん以外の大学が数だけみれば圧倒的。もう現在四年生の新卒市場は絶対的に求人数が不足しているだけ、雇用のミスマッチというのはまったく的外れ

例えば具体的にいうと、大学にも求人票がきたり来校してくださる企業があるわけです。僕は96年から就職委員なのでだいぶ把握しているが、この9月以降の4年生向けの大学にくる求人企業数は、あの97,98年や01年ぐらいのひどいときでも、例えば30、40社くらい対前月比増があるわけです。

  景気回復期はこの比ではなく100社近くあるわけですよ。学部の学生数は一学年200〜250の間ですから、この時期にまだ就職が決まらずかつ求職している学生からみればこれは景気回復期はかなりよく、あの97,98、01年あたりでもまだまだあるよ、という状況

ところが現時点(去年もだが)は、正確な数字ではないのをお断りしますが、あくまで便宜的な数値例であれば毎月の求人企業数は10とか15とかそんな増加数ですよ。これは大学の規模、地域特性、(ネットでは嫌がられるが)偏差値的な大学のランキングなどを総合すれば、おそらく他の大学もおおかれすくなかれ似た境遇にあると思う

つまりあくまで一例ですが、求職している学生がまだ30,40人いて、そこに求人をだしてくる企業(中小企業がほとんどです)が10とかそこらへんな感じ。つまり「量なんだよ、量」というわけです。

  むしろ戦線はそんな「雇用のミスマッチ=新卒生は中小企業を探せ」なんていう段階をいまはすでに離脱しつつあるわけです(もちろん完全離脱などしませんよ、実務ではやる、やらない二者択一なんてしないから)。戦線の主力は、例えば専従者を臨時採用しての企業開拓や、さらには新卒派遣などのサーチに

  四年生の大学生が自分たちの大学の就職課ではなくハローワークに行くような現象をみて、「雇用のミスマッチ解消が四年生の就職率を改善する」と考える人がいたら、理論的なセンスよりも単純な常識の欠如を疑った方がいいと思う。あるいは無知か

 ただ毎回がっくりくるのはろくに現状の新卒市場もしらない人の経験談や「(不況のときこそ)起業すればいい」「海外で職をさがせ」的コメントに接するとき。

 文科省はキャリアコンサルティングを増員するといっているが、たぶんこれは三年生の方のスタートダッシュを加熱化するほうに貢献してしまうだろう。四年生の方については、彼ら(彼女ら)は純然たる就職活動とは異なる世界にさえ接すると思う。

(参考)aag95910さん http://twitter.com/aag95910 に、クルーグマンの論説をご紹介いただいたのであわせて読まれてはどうでしょうか。 ポール・クルーグマン「無職いぢめ」(NYT, 2010/07/05) http://bit.ly/deMy4A

(参考2)なにかこの記事みてコメントしたい人は少なくとも以下の本を読んでからしてほしいといつも思う。

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