頂戴しました。ありがとうございます。経済学が当初から単なる効率性のみを追求するだけの学問ではなく、貧困問題など社会福祉にかかわる問題やビジョンを検討してきたという問題意識から、旧版同様に、代表的な経済学者をあげて、彼らの経済思想と福祉のビジョンとの関連を簡潔にまとめた論説を多数収めたものです。冒頭で教材としてどのように使うかや、またコラム、読書案内なども充実していますね。
個々の経済学者については現在の日本の若手研究者から中堅研究者を中心に執筆が分担されているのもひとつの特徴です。若干、本書の題名通りに経済思想的に傾斜しているので、経済理論との関連が甘いように思える箇所もあったりしますが、ともかく類書がほとんどない中では、依然としていい試みだと思います。
やはり自分の関心領域はまっさきに読むのですが、福田徳三と河上肇を比較した章は、残念ながら経済理論的にも意味が不明ですし、また戦後の日本の高度経済成長を河上肇的な産業政策によりものという評価も、単に事実誤認だと僕は思います。むしろ河上肇的な間違った産業政策を放棄すること(ないし採用しなかったこと)で日本は発展してきたと思われるからです。ここらへんはちゃんと時論的文脈に置きたいならばより研究した後でそのような現代的評価をかくべきでしょう。なぜならこの産業政策をめぐる問題はとても錯綜していて、なおかつきわめて実証的・歴史的なテーマでもあり、十分研究しないで、安易に言及することは、僕にはとても不用心に思えるからです。
- 作者: 小峯敦
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
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- メディア: 単行本
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なお日本の戦後の産業政策についての総括についてはとりあえず以下を参照してください。
- 作者: 岩田規久男
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/01/01
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