藤原書店20周年記念パーティー雑感

 22日に東京會館で藤原書店の20周年のお祝いの式があり出席した。記念品として頂いた『心に残る藤原書店の本』(これは書店に縁のあった人たち100名近くにアンケートを集ったもの)、あと『藤原書店 二十年の歩み』ともに非売品だが、それがとても面白く、帰りの電車の中、いままで深夜のベットで読み耽ってしまった。藤原書店の二十年というのは、日本経済がバブル崩壊後に「失われた二十年」に直面する現代そのものと歩みを同じくしている。これは非常に興味深い同時代史であり、この二十年史は貴重な資料である。また藤原良雄という編集者の証言集、編集者論としても面白い。パーティーにも来賓として乾杯のあいさつをとられた粕谷一希氏の『戦後思潮』も積読だったのでいま合わせて読んだ。本文は経済学まわりを読んでみたが、特に御厨貴さんとの後半の対談での宮崎勇氏ら官庁エコノミストへの批判的な物言いが興味深い。経済学のつるっとしたところへの批判性というものだ。粕谷氏と藤原さんとでは同じ編集者でもかなり資質に違いがあるなあ、というのがこの二十年史と『戦後思潮』を連続して読んだ印象でもある。藤原さんだとつるっとしたところと案外に経済学の全然つるっとしないところを全体としてとらえる編集眼をもっているのだろう。他方で粕谷氏のつるっと批判は、それを極めて吉田満論で展開したまさにつるっとした組織である日本銀行への批判につながるのだろう。全体と特化。

戦後思潮―知識人たちの肖像

戦後思潮―知識人たちの肖像

鎮魂 吉田満とその時代 (文春新書)

鎮魂 吉田満とその時代 (文春新書)

 ところで先の二冊で、前者のアンケート本には僕も寄稿している。本当は自分の処女作をあげたかったが自粛して 笑 『環』の第三号「貨幣とは何か」をあげた。また二十年史を読んで、僕が藤原書店と初めて接触した日がわかるのも面白い。1999年10月20日(水)である。この日は東京河上会の公開講演で僕は「河上肇と福田徳三のジャーナリズム」を報告している。それから現在までに社史をみると10本の単行本や雑誌記事などを寄稿し、3件の講演をおこなっている。また最近では河上肇賞の設立に関与して、いまは選考委員になった。それほど深い関係ではないかもしれないが、個人的にはかなり関わった印象を持っている。それだけ一回一回の接触の深度があるのだろう。

日本の失われた20年 デフレを超える経済政策に向けて

日本の失われた20年 デフレを超える経済政策に向けて

 昨日、最近、一番動いた本は、と書店の人に聞いたら、片岡剛士さんの本をあげた。ネットでとてもよく動いているという。奇しくも題名にも20年がついている。これも何かの縁なんだろう。

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