日本における積極的労働市場政策の総説とその簡単な評価、そして「失われた10年」における日本型雇用システム(終身雇用、年功序列など)と若年雇用の変貌との関連などを、具体的なデータをもとにわかりやすく説明したレポート。特にOECD諸国と日本との比較がつねに意識されているのが特徴であり、本書の客観性を担保している。ただ日本の積極的労働市場政策の評価ー一例で若者支援塾やジョブカフェの実績評価ーは、果たして公的投資額が不足しているだけの問題なのかは疑問を抱く。効率性評価が欠けているような気がして、あたかも厚労省とその関連機関のうたい文句をそのまま継承しているような記述もあるのではないか? ただし日本の若者の雇用市場の実態を国際比較の観点から総展望できるものはほとんどないだけにぜひ手元に置いておきたい内容だとはいえる。
ただ日本の「失われた10年」、というかいまも続く長期停滞を脱するマクロ的な積極政策と組み合わされば、さらに積極的労働市場政策の効果もその守備範囲も広がると思うが、そういう点は本書もまた監訳者も訳者もふれていないのが残念である。
- 作者: 濱口桂一郎,OECD,経済協力開発機構,中島ゆり
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2010/01/30
- メディア: 単行本
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