勝間和代・宮崎哲弥・飯田泰之『日本経済復活一番かんたんな方法』

 御本頂戴しました。ありがとうございます。デフレ不況脱却のための方策をクリアに説明している点で読まれていくのではないかと思います。

ただ水を大量にさすようで申し訳ないけれども、『日本経済復活一番かんたんな方法』を半分まで読んで、ちょっと急停止せざるをえない。飯田パートに展開されている彼の個人的な価値観に正直ついてけない。 例えば実質賃金がデフレで上昇するから駒澤大学はたぶん潰れないのでせこい意味ではデフレは飯田個人では大歓迎とある。正気か? と疑いたくなる。自分の職務として大学生の就職やまた学業の継続の点でもデフレが厳しくのしかかっているのは彼もこの本の中で認めていることだろう 。そのような大学生の窮状はデフレ分析という社会的な立場からの分析であるだろう。と同時に駒澤大学教員という彼個人の職場の環境をも規定するだろう。簡単にいうと日常的にゼミ、会議、講義などの場で学生の窮状ないしその可能性をまのあたりにいする機会があるだろう。 そのような機会ないし機会の可能性の増加に思いをめぐらせれば(いや、当然にめぐらしていると思ったのだが)、駒澤大学教員としてデフレがいいなどとは個人の立場としてもいえるものではないだろう。 彼はこの話を持ち出す前に小飼弾が消費税についての評価で、富裕層の小飼が個人的な利益と社会的な立場をちゃんと区別していると説いている。その区別の是非はどうでもいい(反経済学をふりまいている人物に評価を与えることもないと思うが)。 問題なのは小飼とのアナロジーとして飯田氏が先の駒澤大学教員のデフレ利益を説いていることだ。確かに小飼にとっては消費税が上がっても富裕層の彼には影響ないか事実上得だろう。 しかしこの小飼からのアナロジーを大学教員(つぶれやすい大学とかつぶれにくい大学というのがここでの問題ではない)のわたしたち教員の立場にそのままあてはめることは少なくとも僕にはできない。あまりにも安易すぎる。正直、先を読む気力を失った。

ただ僕とここをご覧の方々は当然に価値観も現実認識(個人的利害と社会的見識の区分の度合い)も違うだろうから、そういう方はぜひこの本を手にとるほうがとらないよりも数段いいだろう。ただネット的には「リフレ派」と称されても時としては受け入れがたいほど価値観の違う問題や見方もあるということを知ってもらえれば十分である。現状の打破としては(半分しか読んでないが)ベストの処方箋をこの三人なら提起しているだろう。

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)