相撲をめぐる雑談

 最近の理事選挙や朝青龍問題をみていると、中島隆信氏が『大相撲の経済学』で書いていたように日本の会社システムの弊害の部分をみるようで嫌になるね。

『大相撲の経済学』のちくま文庫版には貴乃花についての興味深い補遺がある。当時、話題になっていた兄弟による「二子山」年寄株取得をめぐる問題。これについて中島氏は、もともと相撲協会貴乃花の人気にあやかりたいために引退後も審判部副部長への異例の出世など協会批判をかわすために利用したという。

貴乃花らの年寄株問題は、協会の改革を望む貴乃花が、その一門へ年寄株を集中させることで、協会改革をしやすい布石だと、協会側には見えた。そのため協会側には貴乃花の改革もうけいれがたく、このような政治的にみえる行動のために「親方としての出世の道はほぼ閉ざされたといっつていいだろう」。

 中島の指摘は、今回の件を考えると予言的。協会にとって好ましくないと思われた貴乃花はいわば飼い殺し状態。そこで今回のように貴乃花が理事選挙にうってでるのは、そのような飼い殺しを彼が是としなかったからなんだろう。

 中島の本では、貴乃花の改革案としては、相撲部屋の透明性、茶屋制度の改革、給与の年俸制などをあげている。それぞれ経済合理性に適った考えだと思う。テレビをみていると、マスコミの「造反」追及キャンペーンだか魔女狩りだかしらないが、相撲協会の構造的問題を指摘するよりも、それを内部変革しようとする要素を「魔女」として追及しいてるみたいにも見える。

朝青龍問題についてはこのエントリー参照http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080920#p1

大相撲の経済学 (ちくま文庫)

大相撲の経済学 (ちくま文庫)