ふたりの村上の家族の物語

 村上たかし星守る犬』と村上かつら『ラッキー』。ここまで違う「家族」の解釈もないかもしれない。友人に勧められて読んだ『ラッキー』。その後に『星守る犬』を読んだ。後者はベストセラーだが、前者の『ラッキー』はあまり知られてはいないかもしれない。

 『星守る犬』は家族関係を固定したものだとみなして、その「固定した関係」が崩壊していく過程とその救済を描いている。『ラッキー』の方は、家族関係がうつろいやすく変化を伴うものだということを明らかにしている。したがって救済という結末はでてきようがない。救済とは何か固定した関係の崩壊を補うものでしかないからだ。

  僕の家族観はどうも『ラッキー』的なものに近い。家族もひとつのうたかたの関係であり、それゆえに愛おしくも惜別の情もわくのだろう。もちろん憎悪さえも。そしてそれらの感情への執着自体も変化するものだと『ラッキー』は告げているのかもしれない。

ラッキー―Are you LUCKY? (ビッグコミックス)

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