東アジア共同体と財政再建=増税路線

 ふと思ったのだが、なんで鳩山政権は東アジア共同体を好むのか。特に国民的な合意なんか全然ないにもかかわらず一国の社会・経済制度の行方を大きくかえるかもしれない空手形を出すのか、鳩山首相の個人的なイデオロギーももちろんあるんだろうけれども、財務省よりのエコノミストもこの東アジア共同体になぜかやはり超越的に(例えば既存のそのエコノミストたちの主張と関係なく、あるいはやはり政治的・文化ファクターを無視して)支持しているのかいままでわからなかった。

 ところがふと、長谷川幸洋氏の『日本国の正体』を読んで数日してから、ある友人と電話で話したあとに、この東アジア共同体も(政府紙幣潰しと同様に)財務省財政再建、とくに増税路線のための足掛かりという全然、東アジア共同体本来の目的(これもよくわからないが)とは違うものに根ざして強く推進されているのではないか、という気がしてきた。もちろん他の省庁(特に経産省など)は違う思惑もあるだろうが、なんといってもいまは財務省の時代、この東アジア共同体が、財政再建のためのひとつの「手段」にすりかわっている、いや本来こんなに強力に主張されているのはそのためではないか、という疑念を抱いた。

 例えば共通通貨を創設するためには、ユーロ圏(への加入条件)と同様に財政規律が厳格に見直される可能性がでてくると信じる人がいたとする。東アジア共同体の構築というのは、中長期的にみて、彼らにとっては財政緊縮、ただし増税路線への絶好の「手段」ではないのか、という気がしてきた。

 実際にはすでに『経済政策を歴史に学ぶ』の最後部の森嶋通夫小宮隆太郎論争でもかなり詳細に触れたし、またこのエントリーで安達誠司さんの著作に書かれているように、東アジア共同体というのは、もしそれが性急に実現したら、あたかもアジアでの経済的覇権(プレゼンスといった方が穏便か)を目指して自滅の道を歩むようなものだと思うけれども。

 ふと思った程度なので間違っていたら修正するけど。

関連エントリー
二・二六事件と「改革病」 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090903#p3
東アジア共同体への懐疑http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070705#p1
窯変小国主義http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20060927#p1

経済政策を歴史に学ぶ [ソフトバンク新書]

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