菊池正俊『お金の流れはここまで変わった!』

 僕にとっては非常に参考になった『外国人投資家』(洋泉社新書)の第二弾とでもいうべき好著。本書は最近の金融危機前後の状況を踏まえて、原油、食品、株式、債券、不動産などの取引や保有形態について初心者にもわかりやすく説明している手ごろな概説書である。

 前著の『外国人投資家』の直接の続きともいえるのが、第4章の「日本株は誰が保有し、誰が売買しているのか」である。日本の株式市場における外国人投資家のシェアが非常に高く、そのため企業のガバナンスも外国人投資家の意向を無視できない、と著者は指摘している。これを本書とは離れて、表現してみると株主利益を中心とするガバナンスが重視され(そのため投資優先で労働報酬は圧縮傾向)、他方で企業の利害関係者全体の利益を考えるガバナンスが軽視されているのは、(ここまだよく考えてないけれども→長期的な取引を重視する*1)日本の投資家が株式投資を行わないためである。その根源が日本人が資産を現金・預貯金の形態で保有していることにある。その背景は本書からさらに離れて言えば、もちろんデフレとデフレ期待が何年も継続したこと(まだ実体では全然払拭されてないこと)、失われた10数年の名目価値の損失を補うだけのリフレ過程がまったく実現されなかったこと、によるのであろう。いわばガバナンスの仕組みを規定しているのもデフレの病なのではないか、とこの本の当該箇所を読みながらなんとなく思った(まだ固めて考えてないけども……。菊池氏の見解は日本の構造問題解決への見通しをつけることとか、証券税制の改正、不況に強い日本企業のPRなどを上げている。

お金の流れはここまで変わった! (新書y)

お金の流れはここまで変わった! (新書y)

*1:著者は日本人の個人投資家は、株式売買で現物では長期保有信用取引では短期志向であると指摘している