小島寛之『容疑者ケインズ』

 献本いただく。どうもありがとうご‥‥って、これで二冊目やん! 笑)。

 「小島さんは僕とマクロ経済の理解が違うからあんまり紹介が気乗りしないなあ」(おススメしたくない)という選択と、「でもこの本を編集した人たちは僕のよき理解者たる知人でもあるしこの編集センス爆発のシリーズを紹介するのは非常に意義のあること」(おススメしたい)という選択肢に、田中は直面している。

 小島マクロ経済理論を批判して本書をゴミ箱にでも叩き込みたい気持ちがあるものの、やはり主張は違っても確かにこの本にはなにかしらの魅力があるのは事実であり一読の価値があるという「誘惑」が僕の内心に忍び寄る。しかしそれはリフレ派の主義心情にちょびっと反するのではないか、「優柔不断な俺たち=日本人だから、停滞してもやむをえない。金融政策なんか効果ないから優柔不断に何かが終わるの待つべし」なんてことになりかねない小島理論はまるで、不況の前に指をくわえて佇む某厨銀みたいだし、いや小島さんの本だからこそ祭りにもっていき‥‥と激しく自問自答が僕の内心で繰返され、「自制心のコスト」が急上昇する*1

 やがて郵便ポストに音がする。何が来たかな? と思って開封したら、また同じ『容疑者ケインズ』だ。小島さんからではなくまたもや編集の方々からだ。田中の弱い心はボキっと音を立てる。僕は「誘惑」に打ち負けて、こんなエントリーをまたまた書いて、皆さんに本書を激しくおススメしている。笑)

 「しかし、そんな雲をつかむよう形のない誘惑こそが、資本主義を不況という地獄に導く悪魔のささやきにほかならないのだ」(『容疑者ケインズ』より抜粋)。

容疑者ケインズ (ピンポイント選書)

容疑者ケインズ (ピンポイント選書)

*1:ここらへんの誘惑ー自制心のコスト理論の明瞭な解説は小島さんの本に詳細です。