エヴァンゲリオンの経済学と兜木励悟『エヴァンゲリオン研究序説Ⅱ』


 新劇場版を先週みたけれども予告編が面白かった 笑。エヴァは経済学の対象にはならないだろうな、と思ったけれどもよく考えたらガンダムよりもある意味でチャレンジングな対象かもしれない。ガンダムの方はイケメンガンダムを始め、わりと経済戦争的な要素だとか、経済格差、戦略交渉の経済学、行動経済学小野善康経済学などを取り入れられるので語りやすい。

 エヴァの方は、人類が半分滅んだ後の世界+要塞都市+現状と大して変わらない消費都市という感じだと当初は思っていた。要塞都市の風景を統制経済と考えるのはちょっと間違いで、単なる自然災害を防ぐ土木事業の一種と思えばいいかな、と思っている。人口が半減したので、少なくともエルフの皆さん方のような熟練労働者の実質賃金は高そうであろう。またセカンドインパクト直後はたぶんハイパーインフレに見舞われ、その後はインフレ抑制をぐりぐりやって深刻な不況へ、そして猛烈な土木事業・軍事支出の実施での「特需」での景気回復、そして自然災害防衛都市=第3新東京市とその他の日常的都市の共存(ミサトらの購買風景から市場原理中心の経済システムだと推測できる)の誕生、という感じかな、と。

 あとポズナー的な地球規模災害の保険システムの構築の話を入れ込めるのかどうか。ゼーレは実はその地球規模災害用の保険会社であり、「裏死海文書」は裏保険証書であり、「人類補完計画」はほらあの保険のおばさんがみせてくれるあやしげなライフプランと同じ。そして大規模災害保険料の支払いに耐え切れなくなったゼーレの不良資産をゴリゴリのハードランディング論者(シンジのパパ)が清算するために厳しくシバキあげたのが、ちょっと間違えて最終的に人類滅亡(シンジとアスカしか残らず、あとはせいぜい破裂した巨大レイの残骸ぐらい)に至った、と考えてみる。

 新劇場版は碇シンジの物語が壊れていくらしいのでしばし注目しなくてはいけない。


 ところでこの「兜」木氏の著作には経済編が掲載されている。基本はよくあるエヴァや施設の建築費算定な感じ。エルフの給与も分析しているけれども単に数字を計算しているだけでセカンドインパクトの効果を取り込んでいない。そもそも「しかし、セカンドインパクト級の災害を、金銭経済が発達してからの人類は経験していない。海水位が上昇し、地軸が歪み、人口が激減した世の中の物価の予測などとても困難だ」とあるけれども、黒死病の経済学(人口激減、当時は温暖化で海水位上昇)やその他の大規模災害の経済学みたいな話を取り入れれば、少し上に書いたような構図が描けるのではないだろうか。


エヴァンゲリオン研究序説II<新版>

エヴァンゲリオン研究序説II<新版>