水月昭道『高学歴ワーキングプア』


 これを読むと、僕が80年代中から90年代はじめに社会人(20代前半)→「ニート」(20代後半)→大学院(29歳から35歳まで)→教員(35歳から)となった経路は完全に消滅したことがわかる。国内の大学を利用した(出戻り?…いい言葉が浮かばん)経路で残されたのは深田萌絵経路(20代前半短大・OL→大学→30で再就職)のみか。


高学歴ワーキングプアを考えると、アカロフの中古車市場における複数均衡(高学歴が高品質となる均衡、低品質になる均衡=高学歴ワーキングプア均衡)を適用するのが一番しっくりいくように思える。中古車市場になっているのは大卒市場との関係で。


 [供給サイド]大学院卒の質は価格に依存して決まるので、院卒の市場価格が低いほど大学院生全体に占める質の悪い(「質が悪い」というと日本語として嫌だ、という人がいると思うので、ここでは雇用先での将来的な成果の多寡みたいなものだと考えてもらいたい)大学院生の割合が高まってしまう。市場価格が高いほど質も高まる


 [需要サイド]大学院卒を採用するほうからは、市場価格があまりに低いと質の悪い大学院生を採用してしまう可能性があるので需要は低水準になる。市場価格があがるほどに質が高まるので需要は増加していく(あまり市場価格が高すぎると今度は減少する)。院卒者への需要曲線は価格に関して後方屈折していると考えられる。


 [市場均衡]需給の関係で、複数均衡が発生するが、このときに高学歴ワーキングプアが発生しているということは低位均衡が成立している可能性が大きいということなんだろう。

高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

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