加藤出の短期金融市場のインフラ(≒短資会社)を巡る発言

短資会社の利害と日銀の政策との関連がわからない人も多いだろうから一例というかこの問題をみるひとつの視点として以下の加藤出氏の2004年の発言を引用しておく。簡単に指摘すると、この加藤氏の発言だけでも日銀OBがダイレクトに多数短資会社天下りすることが、かなりまずいことがわかる(公知の情報からではなく「内部」情報として短資会社の戦略変更がありうる可能性がある等)。国会でさらにこの加藤氏の発言をベースに質問をすべきではないかと思う。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsme/kinyu/prog04s.html

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsme/kinyu/pdf/04s/04s117-katou.pdf

量的緩和策の長期化によって、短期市場のインフラは著しく損なわれてしまっている。
あらゆる金融機関で短期市場セクションの人員削減が行なわれた。また、日本の金融機関
は2〜3 年で人事異動を繰り返して行くため、現在、ゼロ金利以外の環境を経験したこと
がある短期市場ディーラーは半数以下に減少していると推測される。更に、専用電話回線
が撤去されるなどのディーリング設備の縮小も生じている。
量的緩和策解除が近づいて来た場合には、多くの金融機関は短期セクションの建て直し
に着手しなければならない。この点が、過去の引き締め転換時と最も異なるポイントであ
る。短期市場参加者にとっては、「危機管理対策」として出口議論に臨む必要がある。

量的緩和策によって損なわれた短期市場のインフラを今後如何に回復させるかは、市場関
係者の大きな問題意識になっている。しかし、量的緩和策を解除しても短期金利はしばら
くは超低金利の水準が継続されることが予想されるため、収益の観点から、短期セクショ
ンの人員を元の数に完全に元に戻したり、地方金融機関が閉鎖した東京のディーリングル
ームを再設置することは当面は考え難い。限られた条件の中で対応せざるを得ない面があ
るため、ある程度の波乱は避けられないだろう。ただし、解除の前に市場参加者が入念な
準備を進めることができれば、混乱はかなり抑え込めるだろう。そのためには、日銀は出
口政策議論を封印せず、市場に警戒心を与えておく方が良い。

日本銀行の天下りの実態

病気をしていて完全に見落としてました。宮崎タケシ議員(民主党)がたぶん初めて、日本銀行天下りの実態について詳細に国会で質問しました。やはり短資会社は完全に日本銀行のファミリー企業とでもいうべき状態なんですね。他の金融関係も他業界と比較しても十分に「濃い」天下り関係を形成しています。これに渡りなど通常の天下りのスキャンをかけるとどうなるのか。非常に興味深いことです。

以下は宮崎議員のブログから引用
http://miyazakitakeshi.jp/modules/wordpress/index.php?m=201005

* 天下り問題(特に日本銀行)について(答弁者・原口大臣、日銀総務人事局長)

質問●国家公務員の再就職は、室長級以上(課長補佐の上、最下級の管理職)について退職後2年分の再就職先が調査、公表されており、一部は3年目以降も調査されている。
しかし、日銀は局室長級以上(ほぼ中央省庁の最高幹部である局長級相当)しか公表されておらず、しかも退職時のみ。調査が緩すぎるので、対象を拡大すべき。

回答・日銀●職業選択の自由など総合的に勘案した上で、適切にやっているのでご理解を賜りたい云々

質問●「中央銀行の自主性」があるから天下り調査の内容も自主的に決めているわけだが、職務内容と重要性から考えて、公務員よりさらに厳しい基準で調査すべきではないか。それを、国家公務員よりずっと緩い基準で運用するとは、ひどい。自分たち利権を守るために「中央銀行の自主性」があるというのか。
では、銀行の代表取締役、および短資会社の役員について日銀OBの人数を明らかにされたい。

回答・日銀●地銀68行のうち、8行8人で日銀OBが代表取締役を務めている。第2地銀42行中では同じく5行4人。短資会社は3社のうち、会長2人、社長2人、専務1人、取締役1人、執行役員2人である。

質問●驚くべき数字だ。地銀・第二地銀の一割以上で、日銀OBが社長か会長を務めていることになる。さらに異常なのは短資会社だ。国内3社しかなく、5人しか代表取締役がいないのに4人が日銀OB。取締役合計でも16人しかいないのに6人が日銀OBだ。これでは、ファミリー企業、子会社ではないか。まるで植民地だ。

回答・日銀●中立性に疑いを持たれないよう、適切に云々

質問●疑念を持たれているから質問しているのだ。そこまで主張するなら言わせてもらう。日本銀行がゼロ金利を解除するなど金融緩和に不熱心とされる問題について、学習院大学元経済学部長の岩田規久男教授の著書「日本銀行は信用できるか」に、「あえて理由を探せば天下りが減るということであろう」と皮肉を書いている。もっと露骨に書いている経済学者もたくさんいる。金融政策に疑念を持たれれば、中央銀行の信認、通貨の信認を失い、国民の不利益になる。金融機関、短資会社への天下りを規制すべきだ。

回答・日銀●総合的に判断して適切に云々。短期金融市場の重要性は云々

質問●この場では金融政策や金融市場について議論していない。疑念を持たれるような天下りはやめるべきだと言っているのだ。白川総裁にしっかり伝えて、善処して欲しい。

日銀については以上です。

最近良かったマンガ

ようやくマンガも読む余裕が 笑。

というわけで最近読んだマンガで印象に残ったものを。あまりメジャーなのは面白くても省略。ベスト3は以下の三作かな。

藤原カムイ『ROOTS』

高度経済成長期は本当にすざまじい変化だし、また初期状態でどんな経済環境にあったかでもまったくみる風景が違う。もちろん1、2年生まれたのが違うだけでも共有する体験に微妙なずれがある。カムイ氏は59年生まれなので僕より二歳上。ただそれでも本書にでてくるマンガもテレビもほぼ共通してリアルタイムにみてて影響をうけてる。特に『悟空の冒険』は大好きだった。

ただいずれにせよ、この作品自体は完全な後ろ向きなものでしかなく、これから何か読み手が新しいもの、深いものを得ることができるかどうかは微妙ではないか。時代考証はほとんどすんなりいけた。ただバレンタインデーはそんなに昔から一般に口にされてたのかなあ。むしろクリスマスの定着さえもまだ目新しい感じではなかったか? 

Roots (JC.com comics)

Roots (JC.com comics)

高浜寛『トゥー・エスプレッソ』

フランスのBDとマンガのハーフというべき傑作。これはいいなあ。こんなに丁寧に作りこまれた作品にはあまり出会わない。ここ最近のベストのひとつ。ぜひ多くの人に評価してほしいマンガ。今回の三作の中でも一番気に入っている。

トゥー・エスプレッソ

トゥー・エスプレッソ

ウィスット ポンニミット 『ロマンス』

タイ出身で、『ブランコ』などの傑作時間思弁マンガを描いているポンミットの短編集。彼の従来の作品と同じテイストなのだが、ここでも運命とは何かをめぐるかなり思弁的な世界が展開されているが、説教臭くもなくちゃんとした大人のファンタジーとして成立している。この作家は僕の周囲ではあまり注目されてないが、もっと高い評価を与えるべきではないだろうか。

ロマンス タムくんのラブストーリー短編集

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