「アベノミクス(のリフレ=金融緩和)では雇用は改善してない。総実労働時間数が低下しているからだ!」という理解できない議論について

 総実労働時間数の推移だけみて何がいいたいのか皆目わかりません。ただネットでは「アベノミクス(のリフレ=金融緩和)では雇用は改善してない。総実労働時間数が低下しているからだ!」という意見を見かけます。

 以前、シノドスの論説で片岡剛士さんが以下のような表をまとめてくれました

 これをもとにしてちゃちゃと簡単ですが、アベノミクス期間中(2013年ー2017年現在まで)を推計してみます。

 アベノミクスの期間の実質成長率の平均値は1.32%(今年は第三四半期までのを単純平均)。

 この期間の就業者数の変化は年率1.08%
 総実労働時間の変化はマイナス0.52%。2017年は期間中の単純平均で推計。

 これは上の図表の1980年以降の状況と比較してみると、就業者数の年率の増加が極めて顕著です。例えば85-90年の就業者数の変化率でさえ0.92%程度です。

 ちなみに90年代以降、五年刻みでみてみると、就業者数変化率も労働時間もほぼいずれもマイナス。例外は90年から95年までですが、それでも就業者数の年変化率は0.42%、労働時間はマイナス0.93%。つまり実質成長率への寄与は基本的に労働要因はこの失われた20年において極めて乏しいものです。

 それに比していまの五年間のアベノミクスの雇用面からの寄与はかなり大きいですね。

 これも簡単に試算すると、アベノミクス期間中の労働分配率を0.67程度でみなすと、経済成長への貢献はこのアベノミクス期間中、労働要因が強いことがわかります(年率に直すと0.38%程度)。資本、生産性の貢献は、同0.94%程度です。

 労働分配率は0.67(確か昨年度の数値です)よりも高いかもしれませんが、別にこれを高くすることがアベノミクスの評価を有利にするわけではありません。なぜなら労働分配率は景気がよくなると低下し、悪くなると上昇するという傾向があります。

 いずれにせよ、総実労働時間数が低下しているだけで雇用が改善してないとかいうのは理解がまったくできない話です。