東南アジア系のマンガ家のアンソロジー:『LIQUID CITY』

 経済書を読んだ骨休みに、以前ここでも紹介したアンソロジーをようやく完読。物語としてよりも各作者の感性、ビジュアル的要素などを楽しむことが、この種のアンソロジーの特徴かな? ともかく日本のブラック&ホワイト中心のマンガ世界ではみたこともないような色彩感覚のマンガを楽しむことができる。そしてなんというかやはり「アジアぽいなあ」という感じかな?


 F.S.C(シンガポール)の『NOIRSTORG』(古き木の魔物にとりつかれた少年の話)、TROT CHIN(シンガポール)『THE RESIDENT TOURIST』(近代化で失われた風景を知るカップル)、MiCHEAL CHUAH(マレーシア)『CUBE』(幾何学的な都市風景の戯画)、KUATH『ROUGE』(スタイリッシュな惨劇)、KOH HONG TENG『REGRETS』(走馬灯としての人生の断影を描写)がよかった。物語性があるのが最初の二作と最後のもの。


 しかしこういうマンガの世界があるということは、増田本の書評を書かないでは到底知ることがなかったもの。そういう意味では本当に不思議な気がする。


Liquid City 1

Liquid City 1


 またこれはid:boxmanさんにお借りしているものだが、アメリカのマンガ家たちのアンソロジー『Meathaus S.O.S. 』。こちらは手堅いショートショート的な物語が多く、その分実験性は前者にくらべて落ちる気がする。これまた感性的な言い分で申し訳ないが、「ああ、アメリカのオルタナぽいのだよな」という感じで、前者のアジアンテイストぽさはない(アジア系の人が後者に書いてるかもしれないが面倒なのでチェックしてないけど 笑)。


 TomerとAsafの Hanuka兄弟「The Dirties」(少年と少女の都会版『蝿の王』みたいな話で少女造形がツンデレ系)が一番よかった。とりあえずここhttp://www.thanuka.com/dirties.htmlで全部読める。彼らのほかの作品を読んでみたい。


 ほかは編者Brandon Grahamの書いたイラスト(アイス食べてる女の子:原題Foot Prince)が煽情的ないい味をだしている(マンガじゃないがw)。他はあまりピンときたものがなかった。

http://www.amazon.com/Meathaus-S-O-S-James-Jean/dp/098009240X/


Foot Princeの画像は、こちらhttp://royalboiler.deviantart.com/art/foot-prince-53383659