松崎蔵之助『経済大観』とフランソワ・ケネーの日本における研究

先日、福田徳三研究会があってその席上(オンラインだけどw)、大友敏明先生から松崎蔵之助の『経済大観』(明治35年、1902年)の話がでた。不勉強で知らなかったが、松崎は同書で日本でも先駆的なケネー研究をしていた。大友先生にはご教授に感謝したい。で、さっそく古書で購入できたので読んでいる。ちなみに「経済大観」とはケネーの今日でいう「経済表」のことを指している。また松崎の本で取り上げられている経済表はS.バウアーが経済表の第二版と誤認していたが、実際には今日でいうところの原表第三版である。ケネーの研究はほとんどしていないので、あくまで平田清明・井上泰夫訳『ケネー経済表』(岩波文庫)の井上解説に依存する。ちなみに松崎の本は国立国会図書館で誰でもオンライン利用ができる。物好きな僕のような人が買うだけであるw

以下は松崎の本からの原表第三版。松崎の本ではバウアーが見つけてイギリス経済学教会からでたもの。

 

『経済大観』では、ケネーの略伝、この原表の説明、重農学派についての解説によって構成されている。

経済大観 (経済志叢 ; 第1編) - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)

 

松崎に対しては福田徳三関係であまりいい印象をもたなかったが、深堀すると面白いかもしれない。農業経済学の貢献もあるが、河上肇は松崎に就職の労などで恩になっているがあまりその人物を高く評価していない。大友先生によれば福田は松崎のケネー解釈を批判的にみてるというが、確かに福田の『経済学全集』(改造社版)に収録された「流通経済講話」には松崎訳は誤訳があるむねを指摘している。福田が誤訳をわざわざ書くときは、河上肇に対してもそうだが、その人物のそもそもの主張に異論がある場合が多そうである。それはそれで面倒な人ではあるw。いずれにせよ松崎が日本のケネー研究の先駆者的位置であることは疑いない。