報道では、米国の逆イールド現象をもって景気後退のシグナルとみているが、これはもちろん逆イールド自身が景気後退をもたらすものではない。
米国の景気後退、そして米中貿易戦争と並んでか、それ以上に世界経済低迷に貢献しているのが、FRB(米国の中銀)のパウエル議長体制以降の金融政策のスタンスだと思われる。
イェレン前議長時代からのテーパリング路線はあるにせよ、トランプ大統領誕生からは事実上その路線は“拡張気味”に修正されていた。ところがパウエル議長が就任してからは再び、ほぼ機械的にテーパリングがすすめられてきた。
マネーの政策的な縮小は、米国から世界経済に大きな(悪)影響を与え、それが今日の状況を作り出していると思う。
トランプ大統領には政治的イデオロギーなどから、日本でも「リベラル」系の論者は単純に全否定気味だが、僕はそのような立場は採用しない。彼の経済政策には正しいものも間違ったものもある。トランプ大統領のtwitterを駆使した、パウエルFRBへの金利引き上げ路線への「政治的圧力」は、彼の政策観とも整合的だし、また米国、世界経済にとっても一定の貢献を行ったと評価できる。ただしまだFRBは金利引き上げこそは慎重姿勢に「転換」したかにみえるが、以下の表でもわかるように直近のマネタリーベースの対前年同月比をみるとマイナス11%超という金融緊縮路線は放棄していない。その意味で、債券投資家たちが、経済の先行きに警戒感をとても強めて、逆イールド化現象が生じたのは理解できる景気後退へのシグナルといえるだろう。