谷口ジロー『いざなうもの』(小学館)

 谷口ジロー氏の絶筆を含む、主にフランスでBDで出版された作品を中心にして、それ以外にも小泉八雲についてのすぐれた短編を含む良質のマンガである。

 谷口ジロー氏については、「谷口ジローメビウス」的な趣旨で論説を書くつもりが何年もたってしまった。谷口ジロー氏に直接、メビウスからの影響についても質問させていただいたことも思い出である。資料はかなり集めたのだが、別な研究者が書くのではないかという気がしてお蔵入りのままである。

 そんなことではいけないのだな、とこのマンガを読んで思った。しかし本当に惜しい方だった。本書の内田百�瑶の「冥途」を原作にした「いざなうもの その壱 花火」は谷口氏の新しい表現スタイルへの最初の一作であったように思えて、その続きを見ることができず残念です。

僕が谷口ジロー氏について書いたものは以下の『ユリイカ』の中に収録されています。