2016年に一般公開された外国映画で記憶に残るベスト5

 昨年はあまり映画をみた記憶がない。やはりネット論説を週末に書いていたので時間的制約がきつくなったのだろう。それでもほどよくは見ている気持ちにはなっているので備忘録を兼ねて以下に、昨年、一般公開された映画の中からいま記憶に残っている五本の映画をあげる。順不同である。

1 ドゥニ・ヴィルヌーヴ『ボーダーライン』

 アメリカーメキシコ国境の麻薬戦争を舞台にした国防総省、FBIと麻薬マフィアとの攻防戦と書いてもこの物語の重量級の迫力はわからないだろう。物語の核には、個々人の怨念と執着があってそれが暗黒的な魅力を生み出している。

2 ジャコ・ヴァン・ドルマル『神様メール』

 創造主の神様がただの嫌な奴だったら? 女神は虐待されてる専業主婦、その子供たち(イエスと妹)は父親に反抗して“世直し”? というワンアイディア設定でおしきるコメディ。ピリ・グロワーヌがちょっと人間的価値から距離をおいた美少女を演じていていい味をだしている。日本ではあんまり高評価をきかないが、昨年みた映画の中で最も鑑賞後の気持ちが晴れたもののひとつ。

3 ジョン・クローリー『ブルックリン』

 1950年代のアイルランドと米国ブルックリンが舞台となる、アイルランド移民の若い女性の物語。アイルランドに残った姉や母親、そしてブルックリンとアイルランド双方での恋人たち、またそれぞれの国での生活と交流が静かに描かれていて、新しい人生の可能性がまた過去との残酷でまたつらい別れと表裏一体であることを鮮明に描いている。このようなシンプルで、だが映画的な魅力をもつ作品は、最近はあまりないだけに、誰にもすすめることのできる。

4  レニー・アブラハムソン『ルーム』

 誘拐された女子高校生が、監禁された部屋の中で出産し子育てを強いられる。この過酷すぎる環境の中で、その子供はルームをひとつの完成された世界として受け入れ生きている。その絶望と裏腹の神秘的ともいえる世界観が独特の引力をもつ。後半、外の世界にでた親子を待つ世界の変容とその試練もまた素晴らしく描かれている。こう書いていてまたみたくなる一作。

5 パク・ジョンヨル『ビューティー・インサイド』

 韓国の恋愛映画。見かけ&性別が一日で変わってしまう人間(たぶん原型??は若い男性)とその人と恋愛関係に落ちた女性との物語。アイデンティティジェンダーだとか、『エクスマキナ』と同じ問題を考えさせることもできながら、他方でただのイケメンと美女のラブストーリーでしかないという(笑。その落差も面白く味わうことができる。しかし久しぶりにみたハン・ヒョジュが美しすぎる! 『春のワルツ』のときとはまるで別人だ。いい年を経ている感じ。