今日は、「あらいぐんまちゃん。の経済学」というテーマで、あらいぐんまちゃん。(新井愛瞳さん<アップアップガールズ(仮)メンバー>)と一緒に、銀座にあります群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」で話させていただきました。
新井愛瞳さんは、僕の『ご当地アイドルの経済学』を読んでおられた。たぶん今回の企画をうけて勉強されてきたのだと思う。素晴らしい知的好奇心と努力の人です。また一緒にトークをしていてとても安心感があり、助けてもらいました。ラジオでのパーソナリティーとかぜひ聴いてみたいな、と思いました!
ご来場いただいたみなさん、新井愛瞳さんことあらいぐんまちゃん。、ぐんまちゃん、スタッフの方々、お世話になりました!
以下は本日配布したレジュメです。ご参考までに。
あらいぐんまちゃん。の経済学 2016年10月20日 ぐんまちゃん家
田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
あらいぐんまちゃん。とは?
2014年から活動開始の「ゆるキャラ」。中の人は、アップアップガールズ(仮)の新井愛瞳(18歳、以下敬称略)。中の人は群馬県の「ぐんま観光特使」。あらいぐんまちゃん。自身は、群馬県のマスコット(正式非公認)。
経済学とは?
人の行動する動機(インセンティブ)を解明する学問。動機の根拠になるデータを、市場(しじょう。マーケット)からの情報を中心に集めるのが「正統派」。アイドルが売れるにはどうしたらいいかは、経済学の守備範囲外? ノーベル経済学賞。
テーマ:あらいぐんまちゃん。をどう群馬県の経済発展に活かすか?
論点1 ゆるキャラの「経済効果」
ゆるキャラブーム。くまモン、ふなっしー、など全国で人気者。
アイドル界:ゆっふいー(寺嶋由芙)の試み。新井愛瞳さん。
くまモンの経済効果 1344億円(くまモン利用商品の売り上げ&観光客増加の経済波及効果 1244億円、パブリシティ効果 90億円。日本銀行熊本支店調べ)。
ぐんまちゃん 約191億円(2015年、群馬県)、19億円(2014年、群馬経済研究所)
ちなみに、群馬県の名目県内総生産は約7兆8千億円(2015年度。東京都93兆円)、一人当たりの平均所得は約300万円(2015年度、東京は450万円)。
世の中の「経済効果」はほとんど間違い。上記の試算も同様に疑問。理由1)(県内)経済がプラス成長していないと、単に他の支出と代替しただけ。2)「経済効果」は便益しか計算せず。費用面の考慮なし。「純」経済効果を出さず。3)財政・金融政策や貿易の波及効果は理解できるが、域内での民間部門の波及効果(乗数効果)利用は、地域産業連関表の悪用。参考:飯田泰之・木下斉他『地域再生の失敗学』(光文社新書)。
視点:世の中にでている特定商品やブームの「経済効果」はほぼすべて疑問。経済面の客観的な推計をしないかぎり、まともな地域経済の運営には遠い。
ゆるキャラの「経済効果」は疑わしいが、あらいぐんまちゃん。のかわいらしさと癒し消費は別! 非市場情報の重視。
論点2 地域経済はユーロ圏と同じ。群馬県とそれ以外の経済圏(東京など都道府県、外国)との交易による「貿易黒字」が経済成長のキー。
観光経済。“日本のスイス”(上毛三山)。
アイドル立県のすすめ。「アップアップガールズ(仮)劇場(仮)」。
新潟市の試みの参照。
問題点:群馬県はタレント不毛の地(中山秀征、井森美幸らだけ?)。アイドル・タレント文化の層の薄さ。若年層の人口流出問題(20代、毎年3千人純流出)。
ビッグバン方式での改革。
論点3 「アイドル戦国時代」は、とうの昔に死語。アイドル秋の時代。あらいぐんまちゃん。(新井愛瞳)はどうなるのか?
武道館への挑戦。なぜ武道館なのか? 経済学的にはフォーカルポイント。
武道館以後が課題(フォーカルポイントの不在)。アイドルの「貿易黒字」の必要。
暫定的結論:域内・固定以外のファン層の獲得がキー。あらいぐんまちゃん。の「正の外部性」に期待。