『河上肇記念会会報』113号

 河上肇記念会から献本いただく。ありがたいことです。本号では、河上肇と中国や漢詩、遺墨研究などで重要な足跡を残した一海知義先生の追悼特集にもなっています。河上賞では何年もお世話いただき改めて感謝いたします。特集は先生の人柄がよくわかる寄稿が揃い、明るくときに辛辣なその物言いを思い出しました。一海先生の業績を超えるような河上の漢詩研究はたぶんもう出ないのではないか、と思います。研究に行き止まりはないのですが、いまはそう確信します。

 あと原朗氏の「一九二〇年代前半の河上肇ー「社会問題」の研究を中心にー」は、現状の河上肇研究には欠かせない講演録になっている。河上肇が「社会問題」をより自律的にとらえた「転換点」を、従来の研究との対比や、同時代の歴史的事件(米騒動虎ノ門事件)とも関連づけながら、河上肇の思想的変容を描いている。参考文献も充実していて、最近になく参考になる講演の収録だと思いました。

河上肇記念会ホームページ http://w01.tp1.jp/~sr10697360/kawakami.html