日本経済新聞社編『中国バブル崩壊』

 中国経済・社会について多数の記者の取材と記事で構成された読み物。中国政府の規制と特定分野への「産業政策」的投資誘導が歪みを蓄積していき、やがてその分野の期待収益率が低下することで「バブル」の崩壊の危機。それをふせぐために連続的な金融緩和と規制の導入で、また別な分野で「バブル」の蓄積……という状況を手堅くまとめ、また周近平政権による国内統治や対米・対日外交や安全保障問題についても目配りしている。ただ経済的なところでは、中国一国に内在しすぎていて、世界経済になぜ中国「バブル崩壊」が伝播していくのか、そのキーともいえるFRBの利上げ観測などの「期待形成の失敗」にはふれていないのが物足りないところか。ただハンディな入門としての意義はある。主に学生やこれから中国経済に関心を持とうとしている人向き。