桜林さんの最新作です。日本の自衛隊とそれをサポートする企業群、そして人々の今の状況とその問題が豊富な写真・図版とともに丁寧にそして鋭い批判的な視点とともに書かれています。日本の防衛力を支えているのが、多くは「日本のため」という感情に依存していることも本書では明らかになり、それにいつまでも依存していることもできないことも本書を読み通すことで読者にわかることでしょう。安倍政権になってあたかも防衛予算が拡大しているような「幻覚」がマスコミや世論の一部に蔓延していますが、本書ではむしろ防衛産業と自衛隊をとりまく予算的制約は厳しさを増すばかりで、それが日本の防衛力の中長期的な衰退を招くおそれも大きいな、というのが本書を読んだ感想です。
本書は日本の防衛技術やそれを運用する自衛隊の人たちの技能や意識の高さを現場の取材を巧みに活用して、防衛問題という一般にはハードルの高い問題に接近することを容易にしています。桜林さんが綺麗なのは書籍を読む上でも大きな力なのですが、それよりも純粋に書き手として上手いな、と思うところ多々あり、その意味での技術力も僕は参考になりました。
経済学的にも興味深い話題が多いと思います。日本の競争入札制度の問題点、税制上の問題、「武器輸出三原則」の経済的視点からの検討、技術の継承問題そのための継続的受注の必要性、随意契約の再検討など議論すべき問題は多様です。そしてそれらがすべて日本の安全保障の根幹に直結していることを、桜林さんの具体的なルポとともに読者は知ることができるでしょう。
- 作者: 桜林美佐
- 出版社/メーカー: 並木書房
- 発売日: 2014/07/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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