「自由に発想してごらん」という教師は僕からみると最悪の教師に近い。最悪というよりも一種の「暴力」ともいえる……これは拙著『偏差値40から良い会社に入る方法』の結論部分だ。本書の問題意識も、この自由な発想という教育方法への疑問がベースにあるに違いない。
「自由な発想」よりも大学の教育などは、思考の「型」を教えることに現実的な応用可能性の入り口がある、というのが本書のメッセージだ。しかもビジネスの現場では、経済学的思考の「型」は実に役にたつ。それを本書はいくつもの事例を紹介しつつ、軽快な筆致で説明していく。
飯田さんの注意書き通りに、本書は経済学の副読本としての位置づけがいいだろう。そのためにも『飯田のミクロ』やここで紹介した飯田本(すでに新ジャンル)を読むことでも、思考の「型」の活用方法がわかるに違いない。
特に考慮すべきコスト、考慮すべきでないコストを扱った後半は、ビジネスの現場だけではなく、社会問題を考える際のベースにもなるのでゆっくり読んでその「型」をマスターしてほしい。
経済学は本当に大したことがない学問だ。だが、その一方で、基本的な「型」さえ身に着けば、これほど面白い学問はない。そういう「喜び」を得るために、本書は少なからぬ貢献をすることだろう。
思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント (朝日新書)
- 作者: 飯田泰之
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/12/13
- メディア: 新書
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