ヨラム・バウマン(山形浩生訳)『この世で一番おもしろいマクロ経済学』

 待望のマクロ編が出た。これは速攻で読むべき一冊。まずユーモアがあるw 本当にそうなんだよねえ、経済政策について時論もう10数年やってるけど、本書でいうところの「マクロの双頭の怪物」と延々戦っているわけでw しかもこの怪物には手下がかなりいて、本当は怪物の存在なんか信じていない人(むしろミクロ的な金銭とか名誉とかのインセンティブで動いてる感じがするのでそこはミクロ編を読んでねw)たちが多そうなんだけど、怪物退治の前にそちらの手下との戦いも相当大変w。

 本書のたのしいイラスト(グレディ・クライン)とイラストの吹き出し部分を抜かして、本書から本文だけ抜き書きすると、「でも物価の変動で困るのはインフレだけじゃない。デフレもある。これは物価が全般的にだんだん下がる現象だ。大恐慌や、21世紀に代わる頃の日本での「失われた20年」はデフレだった。デフレ期はインフレ期よりももっと危険かもしれない。高いインフレもデフレもよくないから、金融政策担当者はかなり慎重でないといけない。ほとんどの経済学者は年率2〜3%のインフレを目指すのが最高だと思ている。年率2〜3%のインフレ目標は粘着賃金からくる失業にも対応しやすい。不況だと、賃金は高すぎる水準でつっかえるときがある……でもちょっとインフレがあれば、需給のバランスが取れる。たとえば心理的に賃金カットに反対の労働者でも……たった1%でも賃上げがあれば、インフレ率3%でも文句を言わない。結局、経済学者たちのインフレ観は、医者のアルコール観と同じだ。ちょっとくらいなら、かえっていいかもしれない……でも飲みすぎは絶対禁物!」

 本書はまたこの100年超の経済の変化、貧困の問題、社会保障の在り方、環境問題、グローバル化の進展なども視野にいれて、入門書とは思えないほど各問題にきれいな突っ込みと腑分けを行ってて面白い。

 ミクロ編はゲーム理論を無理なく話題にしてその切れ味に驚いたが、今度のマクロ編も日本人が読んでも上の記述でもわかるように十分に経済問題を理解する上で最適のアドバイスが収録されている。もちろん最新のマクロ問題もいっきに展望できる。なんでこんなにうまいんだろうか。

 経済に敷居が高い人はまずこのバウマンの二分冊を読むことをおすすめしたい。訳と編集協力者(飯田泰之さん)のタッグももちろん強力であるw。

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

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