なぜかいつも「復興」よりも「増税」が先行する:「復興税創設をと「復興構想会議」の五百旗頭議長」

 東日本大震災をうけて「復興構想会議」が開催された。議長提出資料でもまた記者会見でも、一番具体的でかつ強調されたのが、復興のビジョンではない。復興のビジョンについては、すでに原発問題をどう考えていくかをめぐって、「無視」vs「復興の中心的課題」という委員間の対立が鮮明であり、ビジョンのアウトラインさえも定かではない。

 その中で異様なほど強調されているのが、「増税」である。これでは「増税構想会議」である、と批判されてもやむをえない。

 なぜ「増税」がすべての復興そのもののアウトライン以前に強調されてしまうかは、いまの政府の経済政策の大要がいわゆる財務官僚主導であることを示すことなのであろう。

 「復興構想会議」における経済的側面は、検討部会が具体的な論点の抽出をするらしい。そのメンバーは端的にいって偏りが著しい。いわゆる日本銀行財務省サイドに近い人々、あるいは官僚の意見にくみする人々ばかりである。おそらく多くの具体的なアイディアは官僚の作文だろう。いったい何のための復興会議なのか疑う。

 しかも奇妙なのは、この政権が「政治主導」でありそれゆえに不安であるという報道や、また議長自身の発言だ。菅政権の特徴は政治主導ができずに、官僚丸投げであることは明白である。検討部会に官僚の協力を期待していると報道もされるが、まさにこの会議自体はその意味では従来以上に公然と官僚べったりの(つまり菅政権の特質まるだし)ものとなるだろう。

 内館牧子氏は、政権における対策本部や会議の乱立にも「復興構想会議もその中の一つと国民に思われたら、東北がつぶれる」と苦言したというが、その乱立の背景はまさに官僚主導の「作文づくり」「会議というアリバイづくり」の反映なのである。それを議長みずからがさらに強めるといっているに等しい。

 いずれにせよ、この復興構想会議が、単なる「消費税の増税」などの財務省の悲願を達成する場所でしかなく、また被災地を救済するどころか、日本経済の落ち込みに貢献してしまう場にならないことを祈りたい。 

参考リンク 東日本大震災復興構想会議第一回会議 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/fukkou/dai1/gijisidai.html
上記の最後に議長提出資料(復興税構想)、また対論ともいえる知事グループ提出の資料にも注意。