小田中さんも最近読まれたとか奇遇ですね。僕は自分の研究のマイナーな論点潰しの一環として一昨日この岩波文庫版を買ってさきほど読みました。山泉進氏の解説や校注がすぐれていて教えられるとこと多々です。山泉氏の解説でも参照されている『初期社会主義研究』は住谷悦治論に取り組んでいたときは目を通していましたが最近はノーチェックなので同会のHPをみてみますと、僕が目を通していた12号くらいを契機にして同会の研究が一気に新展開を含めて拡大・多様化をすすめているのがわかり驚いています。研究者の若返りを反映しているのでしょうか。
http://www15.ocn.ne.jp/~shokiken/index.htm
http://www15.ocn.ne.jp/~shokiken/kankoubutu.htm
ところでクリスマスイブなのでさすがに上記の「自分の研究のマイナーな論点潰し」が幸徳秋水の『基督抹殺論』(岩波文庫版)の「解題」にかかわるものだということを詳細に書くのは憚られますので止めますが、同会の研究誌掲載の論文表題を眺めてもこの本自体をテーマにしているのは、雰囲気的には飛鳥井氏の論文くらいかもしれないですね。
ところで幸徳秋水の『帝国主義』の経済学的側面ですが、帝国主義批判としての人口増加・生産過剰での移民や自由貿易の必要性が領土拡張の思惑と一致してしまっている。しかし人口増加・生産過剰の「真因」は、貧民のさらなる経済的困窮にある。社会組織・経済組織を改変することで、富者と貧者の経済格差を是正し、貧者の購買力を増すことさえできれば生産過剰は解決し、さらに貧者の経済的状況が改善すれば人口増加の趨勢も変化する、というのが幸徳の主張なのでした。
これを小国主義的な発想として石橋湛山らの小国主義と関連させることもできるでしょうし、また河上肇の『貧乏物語』や今日のワーキングプア問題との関連で読み解くこともできるかもしれません。

- 作者: 幸徳秋水,山泉進
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/06/16
- メディア: 文庫
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