サブプライム危機の全貌をできるだけの資料を活用して包括的に描こうとした編著にしてはまとまりのある好著。先の竹森俊平論文と合わせ読むことでサブプライム危機の現状はほぼフォローできる。ところで学生にとってはこのサブプライム危機は格好の勉強材料だろう。なぜなら世界主要国の金融・資本市場、そしてFRBをはじめとした各国中央銀行の政策過程を包括的に勉強できるに違いないからだ。しかもまだこの「危機」の全貌は誰もつかめていない、ということは誰でもこの問題に関してこれからキャッチアップ可能だということでもある。
- 作者: みずほ総合研究所
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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本書はどちらかというと竹森論文がマクロ的な政策対応を主軸にしたものだったのに対して、住宅ローンの証券化・ハイブリット化を特に重点的に説明し、アメリカの証券化市場の複雑な仕組みを明快に描くことに成功している。特に第3章、第4章は周到であり現時点でこれに代わる邦語文献はほとんどないだけに貴重だろう。
ただし最後の政策対応はミクロ的な観点に絞りすぎているために、やや巨視的な視点に欠ける。そこは竹森論説で補完できるのではないか、と思われる。