原題は「島」。湖畔で釣り客を相手に船宿(湖に浮かぶ個室)を提供したり、自ら売春をしている女。殺人を犯した男がここに逃げ込む。男と女がそれぞれ殺人と暴力を重ねることで、いまある世界を離れふたりは同一化していく。清算主義の実行による別な世界(平等化された世界)への移行をここでもキム・ギドクは描いている。この作品だけDVDが現時点で在庫切れなのでえらく見るのに手間がかかった。
なおキム・ギドクの清算主義的な思考には、ふたつの清算の効果を重視しているように思える。ひとつは現実の世界の従属関係を強いる力として、もうひとつはこの現世的な権力関係や既成の価値観を破壊し別な世界に移行することを可能にする力として。
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『受取人不明』は『コーストガード』と並んでキム・ギドクの私的な回想に多く依拠した物語だという。基地の街での三人の若者(片目を喪失している女学生、米系ハーフの若者、中卒の気弱な青年)が破滅していく物語である。完璧とでもいうほど救いがない。この映画がかっての監督の若い頃の心象を描いたものであるならば、韓国でも米国でもなく、彼がフランスに出国したことが納得できる。
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キム・ギドク作品におけるサティとエゴン・シーレの引用はちょっと面白い。フランスの評論家たちも注目していた。