小野善康『不況のメカニズム』メモ


 ちょっとマイナーな関心をここにメモ。ハードな理論コアは他の人が質問したり議論するだろうから、自ずと関心はマイナーなものにw


 1 夕張市の財政のあり方への評価(市外に所得の流出がなければ成果があったなど)は、本書の乗数分析批判などの財政の捉え方と整合的なのか? 夕張市の破綻は価値のないものを作った結果ではないのか?  


 2 コンドラチェフ型の景気循環モデルとして、日本の停滞を説明するふたつの理論(小野理論と篠原三代平理論)がある。前者は、投資循環を否定し、後者は投資循環を肯定する。後者はその延長にインフレターゲットなどの政策を高く評価する。ところで投資循環の否定は実証的な裏づけがあるのだろうか? 篠原氏の『成長と循環で読み解く日本とアジア』などには投資循環の実証的証拠が引用されているが、小野氏の方ではもっぱら投資循環の否定は理論的な分析に終始している。またコンドラチェフ循環の理解にも両者はかなり差があるようだ。両者を比較するのはまさにマイナーな楽しみにつながる。


 3 小選挙区制のもとでの小泉構造改革の支持は、本来の支持層であるはずの大企業や富裕層だけではなく、国民一般から支持された。だから国民は小泉構造改革のもたらす政治経済的果実(大企業、富裕層に有利)に無頓着に、「効率」という長期目的の内容を誤解したまま魅かれた、と著者は理解している。これは国民一般の無知(小野氏の指定するそれぞれの階層の長期的・短期的利益への無知)が前提にされているようだが。