2007年上半期経済書ベスト5


 頭の中は週末締め切りの原稿とと学会逝きで一杯ですが、そんな中でそろそろ上半期も終わりなので今年度読んできた経済書のベスト5をご紹介。思ったより激戦。順位は仮。

第5位 鷲田小彌太『夕張問題』(祥伝社新書)

 あまり期待せずに読み始めたのだが著者の情熱と具体的な再建策の方向性を示すなど意欲に感銘。

「夕張問題」 (祥伝社新書)

「夕張問題」 (祥伝社新書)


第4位 野口旭『グローバル経済を学ぶ』(ちくま新書

 あまりにも見解が近いのだが、つねに教えられるところ多の明快な新書。今回は個人的に雁行形態論の解釈に感銘。

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)


第3位 ジョン・マクミラン『市場を創る』(NTT出版


 これは経済への入門としてもベストに近いかもしれない。すばらしい着想と卓見に満ちた本。著者がかかわったオークション理論全般にも関心を誘われた。マンキュー先生もおススメ。

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える") (叢書“制度を考える”)

2 小峯敦『ベヴァリッジの経済思想』(昭和堂)

 福祉国家の再考とか、市場主義とか、そんなこと言う前にまずはこの大著を読み、国際的な研究水準でのベヴァリッジの社会構想を考察すべし。今週の『週刊東洋経済』で橋本努氏が、ベヴァリッジの経済思想の本質が安易な政府への依存とまったく異なるものであることを明記した適確な書評を書いているので一読をおススメ。この本、あんまり評価を一般世間で聞かないないけれども専門家だけが読める本ではなく、むしろ経済問題に関心のある人がこれを基本書として読んどくと凡百の福祉国家論への賛成・反対論を吟味する独自の視座を獲得できると思う。超おススメ。

ベヴァリッジの経済思想―ケインズたちとの交流

ベヴァリッジの経済思想―ケインズたちとの交流

1 安達誠司『円の足枷』(東洋経済新報社

 野口さんの本と同じく影響を個人的に多大に受けているので、特にどこがいいのかわからなくなりつつある一冊(笑)*1。ともかくネタの宝庫なので何度も使えて読めるのが安達さんや野口さんの本の特徴。


円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋

円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋


 しかし問題なのは今年はマジメ?なのが多くて、なんか艶や色気や邪気のある経済書・関連書に乏しいように思う。例えば、http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070217#p1で話題にした『LOST』の経済学とかhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070530#p6のパリス・ヒルトンの経済学とかに該当するようなものが皆無に等しい。二年前のhttp://reflation.bblog.jp/entry/257358/や、不作だった昨年http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20061230#p1以下のどん底の様相。ここでだれか勝負期待(←他力本願

*1:日本語わかからない人がいるといけないので注釈しとくと、特にここがいい!いうのではなく全部いいw