日本銀行の“政策内容のマスコミへのリーク”を批判するカシャップの『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月1日付)論説


 うわーぉ。A.カシャップAnil K. Kashyap まで例の問題に参入。『ウォール・ストリート・ジャーナル』の記事はネットでは有料なので彼のHPにそのうち掲載されるかもしれません。http://faculty.chicagogsb.edu/anil.kashyap/research/


 日本銀行の政策決定内容の事前リークへの徹底的な批判と、その本質には実質的なデフレターゲットという世界中の中央銀行が採用を思いつきもしない(苦笑)政策目的を「物価安定」として保有していることにあると、もう日本銀行メッタ斬り。


 さらに円キャリトレードなんていう中央銀行の金融政策が相手にしていい問題だかわけのわからないものにかかわずらうのはどうしようもないね、とお手上げ状態。こんな恣意的な理由と間違った「物価安定」を市場に鵜呑みにさせるのに、リーク戦術を使うと、もうリークしないと逆に市場は中央銀行のいうことを信用しなくなるよ、と辛らつに批判。


 カシャップのことばをいくつか引用。

<What explains the leaking, unpredictability and nonsensical policy decisions? >


<Which explains the leaks. Absent any discernible logic to the board's decisions from one meeting to the next, leaks in the media are the only way Japan's central bank can signal its intentions to market participants.
Without the leaks, no one could understand the board's plans.>


 日本銀行は従来のリーク付き「物価安定」政策を放棄し、明確で透明性をもったインフレ目標を設定するのが残された信頼回復のただひとつの路であると言い切ってます*1


 カシャップの論調がスタンダードなものになるでしょう。


 なお、リーク問題と日本銀行の今回の政策決定については当ブログの以下も参照ください。

 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070226#p1
 
 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070223#p2

*1:インフレ目標と合わせ技でもいですが、もうふたつ選択肢が考えられます。ひとつは福井総裁の辞任、もうひとつは日銀法改正です。どちらも強力に市場参加者にレジームの転換を知らしめるでしょう。ただし1年ほど後の武藤副総裁への禅譲では効果薄。というか完全に現行路線の踏襲になります。その間に武藤スジからいろいろリップサービスや、その手になるマスコミの別種なリーク戦術が展開されるでしょうけども