宮崎哲弥『新書365冊』

 ま、僕もつい最近まで「下流経済書喰い」と自称してましたので、この種の試みがいかに苦行・快楽にみちた、ようするにSM感覚チックなのかがわかります。さて本書は上流・下流すべての日本で発行された新書を読みまくる現代の「ご意見番」を目指す宮崎氏の努力と才能の結晶です。この書をいま斜め読みしながら、私もふたたびこのブログを舞台にルサンチマン君に終わるかどうかはわかりませんがw 経済本の「下流喰い」(@須田慎一郎)を再開する決意を深くしたのです。(でもやっぱ、時間とお金が足りないので本当の下流喰いはもうこれのブックレビューの「万年危機論者たちの終わらない宴」に書いたので繰り返さないけど)


 さて本書にはこのネット界隈(経済関連限定)でもなじみの深い方がの著作も多くとりあげられてます。

敬称略でいきますと


稲葉振一郎 「資本」論
小島寛之  文系のための数学教室
田中秀臣  経済論戦の読み方
小田中直樹 歴史学ってなんだ?
大竹文雄  経済学的思考のセンス
本田由紀ほか ニートって言うな!
田中秀臣  経済政策を歴史に学ぶ
岩田規久男 「小さな政府」を問い直す
内藤陽介 『反米の世界史』
内藤陽介 『切手と戦争』


といったところでしょうか。ところで宮崎哲弥さんの経済学観を知るにはやはり東谷氏の『エコノミストは信用できるか』などの評価ですね。要するにリフレ派の(僕が核と理解している)期待にコミットする政策への理解があるのかなあ、ということです。あることを期待しますが。


 ところでもっとも参考になったのは仏教関連(「中論」関連)の追記の部分。年来の課題であるフランスの経済思想家のSerge-Christophe Kolmと忘れられた経済思想史家二木保幾の研究に役立つ。