余談

 最近、このブログもアクセス数が増えてきてはじめてみるひともいるかと思います。なのでこのブログをよくお読みの方にむけてではなく、わりと御存知ない方むけに余談として以下書きます。

 僕の従来の主張は刊行されている書籍(ブログのプロフィール欄をご覧ください)にすべて書いてあって、別段今回の事態(株価急落、円高昂進、不況加速化懸念などなど)についてもその処方箋は、積極的な金融緩和政策を中心にしたものであることに変わりはありません。

 ええ、別に財政政策も否定してませんが、これを財政金融政策、と書くと、なぜか日本人の頭脳からは「金融」の文字が消えるので、まずは肝心要の日本銀行の政策を転換しなくては、またいつか来た道をもう一度繰返すだけだと思い金融政策を全面に出してます。財政政策だけに注目するいまの日本の政策は見込みはあんまりないですね。

 それとももう忘れましたか? 財政政策も不良債権処理もゾンビ企業(非効率な部門)を改革すると称した資本市場やらなにやら市場を利用した「構造改革」だとか。そういうものがまったく効を奏さないことをわたしたちは嫌になるほどみてきたんではないでしょうか? 郵政民営化して何か暮らしがよくなりましたか? 暮らしがよくならないものをなんで政府はやるんでしょうか? あるいは労働組合に参加したり、拡声器もって経済格差拡大反対を叫んであなたの暮らしが改善しましたか? 誰かに食い物にされたり利用されてるだけじゃないですか? そろそろ気がつきませんか?

 ただひとつ効きそうなもの、いまの(日本以外の)世界のメディアをみればほとんどすべての国が金融危機や不況対策をはじめ、中央銀行の政策に依存しているのがわからないのでしょうか? 確かに本日もほとんどの大新聞・テレビは日本銀行の政策には積極的にふれてません*1。この無視は無知からくるのか、それとも確信犯なのか、本当のことはわかりません。でも無知かな? 笑。

(注)なお、「財政政策」や「金融政策」とか、「不況のときは利上げなの利下げなの?」とか「株ってなに? 円高と円安の違いは?」などなどという疑問をお持ちの方も大勢おいでかと思います。そのときは残念ながらネットでクリック一発ですべて学べる信頼できるサイトは日本には存在しないようです。したがって何か本を購入してください。

たった一冊ならばまずは下のエントリーで紹介した飯田泰之さんの『経済的思考の技術』で十分です。ただしこれを読んで大絶賛してさえも朝生にでてへんな議員のへんな提案に拍手喝采してしまう人もいるようなので道は険しいですがw それでもこの一冊からはじめれればはじめないよりは格段にましでしょう。

http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20081006#p1

ご本人も私信で『経済的思考の技術』がベストだとおっしゃってましたからw

*1:このエントリー書いた後にWBS日本銀行の金融緩和に注目する放送があった。28日のエントリー参照のこと

円高・株安を本当に止めたければ

 数日前にも書いたけれども、円高に連動して株安が進行(まあ、円キャリートレードの巻き戻しと考えたければ考えればいい)していることがそんなに問題ならば、日本銀行がいまの不況でも利上げ路線を放棄して、不況では利下げと積極的な金融緩和をしないかぎり無理*1。以下、雑感というかネタとして書きます。

 対外通貨に対する自国通貨の価値は、ほぼその国の金融政策のあり方によって規定される。現時点ですべての対外通貨に対して円だけが異常に独歩高を続けていて、それがG7あたりでも懸念されてる(実際に懸念するべきは実体経済への影響を考えると特に日本なのだがw)。

 この円高・株安を経済的にまずいと思って、本日も麻生総理は中川財務相らを官邸に招き、対策を練ったらしいが、この「対外通貨に対する自国通貨の価値は、ほぼその国の金融政策のあり方によって規定」という方程式からその対策が妥当かどうかネタとしてコメントしてみよう。

 空売り規制 → 空売りしないでも円買い他通貨売りができますが、なにか?

 銀行の自己資本規制緩和 → 銀行はバランスシートの調整に100歩譲って楽になるかもしれませんが、これを為替レートの変化がどう関係するんでしょうか? 銀行取付の懸念などの金融危機的な状況にない(コールレートとか低水準)日本では金融危機の予防的措置としての意味以外はなく、現状の円高・株安に無縁でしょう。

 円建て米国債を出させる → 朝生で拍手喝采が起きたらしいですが、これ正直よく理解できないんですが、米国は日本のことをかわいそうに思ってサービスしてくれるんですか? 笑。テレビでは日本の税金をアメリカにつぎ込む(=アメリカのいいなりになる)のはよくないみたいなナショナリズム真っ青の発想で拍手喝采だったそうで、拍手した人たちの脳内を疑いますが、アメリカにほとんど発行するインセンティブのない円建て米国債をなんで発行するんでしょうか? まあ、気がむいたらしてくれると思いますが(そうなるとドル独歩高をあえて選ぶということですかwwそうなったら米国も本当におしまいでしょうw)、アメリカに必死に頼む??(現状では土下座しても無理でしょうけれどもwwwまあそれでも同盟国??のサービスで少しは発行してくれるとでも??)のはむしろ日本の方で、拍手喝采した連中のおつむにあるナショナリズム的発想からいうとまさに「日本敗北」ですが、なにか? くだらない変化球よりも、日本銀行の手下みたいな連中に騙されないで少しは直球(円高・株安をとめるのは日銀のスタンス変更が一番)をみたほうがいいよ、本当にorz

 中川財務省の為替介入の口先介入 → いつの時代の手法でしょうかw その結果が現状ですw

 財務省だけの為替介入 → 日本銀行が為替介入の効果をちょうど打ち消すような金融調整をしますのでほとんど効果なし。市場関係者が驚いたらどうだかしりませんが(笑

 しかしここまで追い込まれても何もしないんだから物凄いところだなあ、日本銀行って。まさに自分の組織防衛のために国を売ってるよ。日銀よりのマスコミも同罪。

(補)
関連するほかのブログのエントリー
http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20081027
http://d.hatena.ne.jp/econ2009/20081024/1224858048

*1:もちろん株価も円高もどこかでとまるでしょうけれどもその水準が事実上の恐慌状態にでもなったら笑えんですよね

金融機能強化法改正案雑感

 ろくにまだ考えてないけれども、いくら金融危機への予防を正当化する理論が一部であるからって、とりあえずデフレをとめとかないといかんでしょうが。

 よくある誤解があって、バブル崩壊後の不良債権というのは事実上、96年ぐらいにはもう存在してなかったわけです。それがアジア経済危機や日本のデフレの深化などで97年以降、不良債権が新規発生したいったのです。ここらへんはその昔、野口旭さんとの共著『構造改革論の誤解』に書いてありますので読んでいただければと思います。

 「96年度までの時点で、累積で30兆円を上回る不良債権処理が行われている。他方、96年度までのリスク管理債権の累積は、50兆円を若干上回る程度である。略 96年度のリスク管理債権残高である20兆円強という数字はその差額である。しかし、2000年度中間期におけるリスク管理債権の累積額は100兆円弱であるから、90年代に発生した不良債権の約半分は、97年度以降に生じたものだということがわかる。つまり、現在(2001年のこと…田中注)の不良債権問題の本質とは、バブルの後始末云々ではなく、日本経済が97年の橋本政権時における政策ミスによって引起された未曾有の不況を修復す過程における課題なのである」(106-107)。

 要するに不良債権問題は、ゾンビ企業の延命(追い貸しなど)によって生み出され、それが「失われた10年」(これか現時点からだとすでに失われた18年ほどだが)の原因だ、という人たちがいるが、この不良債権の数字だけをみれば、バブル崩壊での不良債権問題は96年には(新規発生不良債権の額でいえば)事実上かたがついていて経済を拘束する根拠が乏しいということになる。で、不良債権がその後(97年以降)再び激増したのは、経済状況の悪化(橋本失政や日本銀行の事実上の引締め、アジア経済危機という外国からの負のショック)であり、ゾンビ企業バブル崩壊後延命したため新たに不良債権が増加しだしたと考える根拠は乏しい。

 より簡単にこの時期からの教訓を得れば、金融機関がバランスシート上の問題を抱える際には、予防的な資本注入よりも、むしろマクロ経済的なショックを和らげることが大事ではないだろうか? つまりは銀行対策よりも不況対策がより重視されるべきだろう。もちろんその手段は、積極的な金融緩和政策と財政政策のあわせ技なのだが、予防的=即効性でいえば金融政策の転換になる。しかしここに日本銀行の非民主的というより非厚生的態度で相変わらず、世界的には積極的な緩和政策がとられているのに日本だけ滞っていて、それをマスコミも政治も放置したままなのは残念である。

 新銀行東京は、別に金融危機に関係なく、経営のド下手ゆえに引当金不足なのだが、それでも予防的な資本注入が求められるだろう。もしあなたがそんなアホな銀行に自分の税金を投じたくない(そんなアホな銀行に予防的な資本注入は不要)、と考えるならば、まったくといっていいほどコストのかからない金融緩和を日本銀行に望むべきである。日本銀行がやらなければ、政府が金融政策を事実上担うことができる(名目成長率目標+マネーの発行)。