原田泰『若者を見殺しにする経済』

 これから生まれてくる人たち、現在の若い世代が現在直面している困難、また将来の経済的負担を、1)デフレ&低成長の弊害、2)年金の重負担、3)グローバル化の後退、4)若者の経済的格差(非正規雇用の増加など)、5)成長戦略という名の産業保護政策の弊害、6)教育の失敗、という側面から、原田さんらしい鋭い経済学からの視点とデータ分析で論じた快著である。実際に10代の若者たちとの論議も反映されているが、特に最後の教育についての章が豊かになっていることがその証だろうか。

 興味をもった諸点のみメモ代わりに。

1 日本は米国にキャッチアップする前に成長率が鈍化し停滞した。その主因は、70年代の規制緩和の遅れや地方の公共事業の拡大である。そしてそれに追い打ちをかけたのが、90年代からのデフレの長期化(=日本銀行の金融政策の失敗)である。

2 このままいけば現役世代の年金負担は過大になり、消費税ですべて賄うと50%を超す高率になってしまう。今すぐにでも年金の削減が必要。

3 景気回復がすすめば若者の経済格差も縮小する。

4 日本は相対的貧困率を見ると、「貧しい人がとても多い国」といえる。このためベーシックインカムの導入が重要だ。

 最後のベーシックインカムについては、僕もそろそろ本腰いれて考えるべきかな、と思っています。

若者を見殺しにする日本経済 (ちくま新書)

若者を見殺しにする日本経済 (ちくま新書)