論説「アベも憎けりゃ“リフレ”も憎し」by田中秀臣in 『月刊WiLL(ウィル)』3月号掲載

 原題は「偏向報道の経済学」ですが、特にリフレ政策をめぐるテレビの取り上げ方、日本の「財政危機」なるものの報道の仕方、村中氏のマドックス賞受賞を「報道しない自由」などを経済学の視点から言及していきました。

 またBPOについてその役割が正しいものとして機能しているのかどうかを簡単に付け加えましたが、この論点については機会があればまた書いてみたいと思います。

 

月刊WiLL (ウィル) 2018年 3月号

月刊WiLL (ウィル) 2018年 3月号

論説「SNH48と愛国ビジネスの経済学」by田中秀臣in『電気と工事』2月号

 第77回目の連載は、中国共産党文化政策と親和的になっているSNH48の活動を中心に、中国におけるアイドル市場について簡単に解説しました。連載はすでに七年目に突入しております。

 

家庭内暴力(Domestic Violence)と経済学

 内閣府のデータをみて、物凄く多く、また氷山の一角だとも思うので以下に経済学との関連性があるものを掲示。

 主に自分のためのリンク集。論文はまだ要旨しかみてないのでこれから読んでみる。

内閣府男女共同参画のデータ
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/data/pdf/dv_data.pdf

Anna Aizer(2010)The Gender Wage Gap and Domestic Violence
http://www.brown.edu/Departments/Economics/Faculty/Anna_Aizer/main_files/research_files/wagejune16_2009_name.pdf

女性が中心となって働いている職場での男女間の賃金ギャップに注目。男女間の賃金ギャップが縮小するほど家庭内暴力が減少していく。これは家庭内の交渉モデルとも無矛盾(ざっくりいうと女性パートナー側の交渉力が上がる)。つまり労働への報酬で、男女間で賃金ギャップが少なくなるほど、家庭内暴力が減り、女性の健康が促進されていく、というのが要旨。

Anna Aizer(2009)Poverty, Violence and Health: The Impact of Domestic Violence During Pregnancy on Newborn Health
http://www.brown.edu/Departments/Economics/Faculty/Anna_Aizer/main_files/research_files/pov_violence_health_july_2010.pdf

Anna Aizer⁎, Pedro Dal Bó(2009)Love, hate and murder: Commitment devices in violent relationships
http://www.brown.edu/Departments/Economics/Faculty/Anna_Aizer/main_files/research_files/love_hate_murder.pdf

家庭内暴力が周期性をもつことの分析と対策。家庭内暴力を振るわれた女性が当局に助けをもとめても、またしばらくするとその夫やパートナーとの暴力的な関係性に戻ってしまう現象の解明。

ロンボルグが家庭内暴力のコストについても書いている。
https://www.weforum.org/agenda/2014/09/domestic-violence-cost-war-development-goals/

Alberto Alesina, Benedetta Brioschi, Eliana La Ferrara(2016)Violence Against Women: A Cross-cultural Analysis for Africa
経済的な依存が家庭内暴力を生んでいるという実証研究
http://www.nber.org/papers/w21901

マリナ・アドシェイド『セックスと恋愛の経済学』(東洋経済新報社)では、外国人妻とその夫の家庭で、家庭内暴力や離婚の報告が頻繁なのかを分析している。例えば会社で働くスキルを持つ夫と専業主婦の比較的優位の組み合わせでは、実証的レベルでは破たんしやすい。それに対して著者は、家庭内取引では効率的ではないが、似たもの同士で結婚したほうが幸福になるとしている。

橘木俊詔『子ども格差の経済学』(東洋経済新報社)

 去年読んだが感想を書いてなかったので簡単に。全体としてはあまりいい出来の本ではなく、特に政策的提言が父親の取り組みをもっとすること、家庭学習の時間を増やすこと、塾へ行く時間を減らすために学校内に習熟別クラスを増やすなどの提言があるが、前二者は「人間をかえろ」以上のことはいっておらず、ただの説教である。説教もなんらかの効用があるかもしれないが、それは経済学の役割ではない。最後のひとつは、既存の学校のリソース(教員の払うコストなど)を考えると現状の予算と人員では空想物語でしかない。空想を打ち破るだけの提言は本書には予算面の配慮はない。

 前半のさまざまな統計データはアンケート調査などをベースにしているが、あまり面白いものではなく、率直にいって予備校かなにかの勧誘を読んでいるようだった。申し訳ないがそれが正直な感想である。

 後半、日本が「学歴主義」社会であるかどうかの考察は面白い。学歴社会であるならば家庭や個人がそれに見合うだけの支出と成果がバランスしているので基本政府の介入は必要はない。しかし学歴社会ではなく、なんらかの社会的損失、つまり私的な教育からの便益と社会的な教育からの便益がバランスしていなければ政府の介入の余地がある。橘木氏はその見解を持っている。ここは支持できるが、基本的に東大を頂点とした制度的なものにはほぼノータッチである。東大への重点的な予算配分が過大なのかどうかが検証されるべきかもしれない(膨大な業績があるのでしている可能性が大きい)。

 私立大学や国立大学にいくことで得ることのできる様々な収益率を紹介しているところで、大学への教育投資が十分にペイできることが解説されているところは得心がいく。そして私学助成金が社会的にみて辻褄のあう効率的な制度であるという「意外」な結果がでてきている。

 本書は正直、あまり面白くはないのだが、それでも最近話題の子どもの格差を考えるひとつの参考文献としての意味はあるだろう。

子ども格差の経済学

子ども格差の経済学

「日本人はどのくらい貧しいのか -話題の〇〇で理解する、わかりやすい経済のはなし」(2018年1月4日)田中秀臣&田原彩香in Schoo(スクー)

 今月は貧困をテーマに、そもそも貧困とは何か、日本の貧困の状況、隠れた貧困、アダム・スミスからの貧困の見方、価値観の対立、貧困の解消のための政策としてのマクロ経済政策とベーシックインカムベーシックインカムの問題点と漸進的な改革、生活保護による貧困の罠とその解消策などを話していきました。

 それ以外にもご覧いただいてる方々から毎回時事的な問題など答えていきました。いつも真摯で鋭い問題提起ありがとうございます。

 会員登録していただければ、無料で生放送の視聴とまた質問などのコメントができます。また有料会員になられればアーカイブやまた他の実に現代的で若々しい感性や最先端のテーマでの番組を見ることが可能になります。ぜひお試しください。

 今回もスタッフがみんな若いので楽しく、面倒をみてもらいましたw。田原さんリア充vs田中非リア充の戦い(?)は始まったばかりです笑。次回も楽しくためになる放送を心がけます。よろしくお願いします。

 https://schoo.jp/class/4597

今回の簡単な参考書は以下に。
田中の貧困や社会政策についての考え方は、一般書では以下に収録されたものを参照ください。他は専門論文でいくつもありますが省略。

日本思想という病(SYNODOS READINGS)

日本思想という病(SYNODOS READINGS)

日本の貧困については以下のものを(原田泰さんのを除いてはマクロ経済政策の認識はないといっていいのが残念)

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

貧困の戦後史 (筑摩選書)

貧困の戦後史 (筑摩選書)

現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)

現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)

現代貧乏物語

現代貧乏物語

アダム・スミスの貧困論は以下を

河上肇の『貧乏物語』と番組中に紹介した佐藤優氏の現代語訳

貧乏物語 (岩波文庫 青132-1)

貧乏物語 (岩波文庫 青132-1)

豊かな国と貧しい国との対比、特に番組中で話した子育ての負担と女性の貧困の関係は以下の本の最初の章を

経済学 (〈一冊でわかる〉シリーズ)

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