岩田正美『貧困の戦後史』(筑摩書房)

 岩田正美氏の書籍はとても参考になる。と同時に「失われた20年」を強調するのはかまわないが、いつものことだがその原因、解消法の認識はないに等しい。つまり日本の社会政策、社会問題、労働問題の研究者がほぼ軒並み陥っている通常の財政・金融政策への無理解というか無関心が本書にも支配的である。それをまず本書のよくありがちで、また絶対に解消されない深刻なバイアスとして指摘せざるをえない。

 さて本書は戦後日本の貧困が、単なる統計的データ以外に、「貧困は、出発点がそのような数字ではないことがしばしばである。そのような統計にさえ含まれない事態が、ある「かたち」を取って社会に表出するのである」(244頁)。

 としてこの戦後の貧困の「かたち」の変容を、時にはその統計データも排除せず利用し、またオーラルヒストリー、当時の文献、証言などに特に力点を置いて、この70数年の貧困史を追いかけている。その力業ともいえる貢献は、まさに骨太という表現がふさわしい。
 
 敗戦後では、「浮浪者・浮浪児」の問題、やがて「仮小屋」やスラムの問題へと、貧困の「かたち」は変容していく。その変容は自然現象ではもちろんない。政府や自治体の強制的・半強制的な政策の結果であったり、または国内外の経済情勢の変化への適応の結果ともいえる。その意味ではこの貧困の「かたち」に注目したのは、あたかも貧困がそれ自体ひとつの生命体のように苛烈な環境に応じて変異を繰り返しているともみえる。

 衰退産業に陥ることにより、旧産炭地にも貧困の「かたち」が生じるし、また高度経済成長後期からは「寄せ場」などで貧困は統計にはなかなか現れない「かたち」をみせている。これらはフィールドワーク(資料&史料調査を含む)を通じて明らかにされていくものだ。

 また本書では、児童虐待、飛込み出産など見えない貧困の「かたち」にも注目している。「かたち」は社会からの視点がある程度の濃度・集約度をもたないと現れない社会的現象であるからだ。その意味でこれらの問題は、著者によれば十分に社会的な注目を貧困の問題として集めていないというわけであろう。

 近年の貧困の問題としてはネットカフェ難民、非正規労働の問題などに焦点があてられている。特に「子どもの貧困」「下流老人」「女性の貧困」などが貧困の「かたち」として社会的に注目され、それに対する政府などの対応はとられているが、著者の見方はそれらの対応の結果、むしろ「それらは実質的には、世代間の分断を引き起こす側面があり、一定の財源を、高齢者から若年層へと振り分ける結果にしかなっていない」(325頁)とする。

 これは著者のマクロ経済への無理解・無視から直接に出てくる見方ではないか。パイの大きさを一定のままであるならば、確かにこのような分断が深刻化する。だが、パイの拡大をそこそこの規模で続けるのならどうなのか? そこへの無関心・無理解こそが、社会の分断を深刻化させるのではないのか? この著者も陥る無関心・無理解を解消することが、むしろ著者が結論でいう「日本的構図に追い込まない積極的な貧困対策」のひとつ、むしろ前提ではないだろうか?

 ともあれ本書は仮にマクロ無視・無理解をよしとして読むならば、とても勉強になる戦後日本の貧困の歴史、上記したが、一種の貧困の進化経済学(進歩の意味ではなく、展開し形態を変えるという意味でのevolution)と読める労作である。

貧困の戦後史 (筑摩選書)

貧困の戦後史 (筑摩選書)

チャールズ・ウィーラン『MONEY』(山形浩生・守岡桜訳:東洋館出版社)

 目配りのよさと多彩な具体例、そして現実をしっかり見据える視点から書かれた良質の貨幣論の入門書である。大学生ならば授業の副読本で読むには適切だろう。価格もこの本の分厚さにしては手ごろだ。ただしその分厚さがちょっとしたハードルになる人もいるだろう。ただしそんな分厚さも著者の豊富な話題と訳者たちの日本語がすんなり読めるので大した問題ではないだろう。

 特に日本の長期停滞やデフレに興味のある人は、ウィーランが、インフレはまずいこと、デフレはさらにまずいことを丁寧に解説した第1章「お金ってなに?」第二章「インフレとデフレ」第三章「物価の科学:技芸、政治。心理学」をまずは読むことをお勧めする。そこではジンバブエのいまは失脚したムガベ大統領時代のハイパーインフレと、日本のようなデフレという現象が、実はお金の働きからみればコインの両面であることがわかるだろう。ジンバブエの人たちにとっては迷惑な話だったろうが、ムガベ氏の起こしたハイパーインフレは、貨幣的現象の仕組みをわかりやすく解説できる恰好の題材を提供してくれたと思う。

 そしてインフレよりもデフレの持続の方が経済そのものをおかしくする効果をもつことも納得できるのではないか。その後に山形浩生さんの訳者あとがきをさらっと読んでから、第10章「日本」を読む。そのあとに第6章「為替レートと国際金融システム」を読むといいと思う。

 ほかのところは、なにか新聞やメディアなどで各国の話題があるたびにその該当経済圏の章を逐次参照していけばいいだろう。残りの章はその後でも困らない(第4章、第5章は最後でもいい)。

 もちろん通読がお勧めではあるが、時間が取れない人や関心がかぎられた人には上記のような読み方をお勧めした次第。同じ著者の『裸の経済学』はかなり昔に読んだが印象には残っていない。今回の『MONEY』がとてもいいので、山形さんの新訳であらためて読んでみようかなと思っている。

MONEY

MONEY

経済学をまる裸にする  本当はこんなに面白い

経済学をまる裸にする 本当はこんなに面白い

貧困線についてのメモ

 自分用のメモ。


http://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/kentoukai/k_1/pdf/s10.pdf
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21a-01.pdf


http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf

日本の子どもの貧困分析 :明坂弥香、伊藤由樹子、大竹文雄
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis337/e_dis337.pdf

各種貧困指標の展望

https://www.jica.go.jp/jica-ri/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/field/pdf/200803_aid02_03.pdf

お正月特別企画:2017年心に残る経済書ベスト20発表!!(ベスト10日本人著者全コメント公開)

 明けましておめでとうございます。今年も皆さんのご多幸、ご健勝をお祈りしております。

 2017年でこの経済書ベスト20も5回目を迎えました。ネット(twitterFacebook、メールなど)を経由して毎年100名以上の方々から投票をしていただいています。参加いただいたこと感謝申し上げます。今年も2016年12月から17年11月までに出版された経済書の中から基本三冊を、ハッシュタグをつけて選らんでいただき、投票結果は毎年このブログに掲載してきました。11月下旬から12月中旬まで例年実施。

おひとりの投票ポイントは最大6ポイントになります。1位に3点、2位に2点、3位に1点を与えます。順位が不明のものなどは私の方で適宜配分しています(例:順位不明で二作品投票などは、二著作に2点ずつの配分、1作品だけ投票の場合は3点を付与など)。

エコノミスト』(毎日新聞社)のような雑誌側の選んだ専門家たちの選択よりも、ネットを通じて多数の方に自由に投票していただいた結果は、価値のあるものと思っています。

昨年までの一位をご紹介します。

2012年第一位 ポール・クルーグマン
    『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房
2013年第一位 田中秀臣編著
    『日本経済は復活するか』(藤原書店)
2014年 実施せず
2015年 原田泰
    『ベーシックインカム』(中公新書
2016年 井上智
    『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞社

今年は上位四冊が最終盤まで激しく競いました。また票も多くの著作で分散し、初年度のクルーグマン氏の本のように独走する事態は今年は起きませんでした。特に第一位と第二位は、長年、経済論壇で華々しく活躍をされている尊敬すべきお二人が投票締め切り最終日までもつれました。そして最終日に逆転しての第一位です。

では、今年の第一位をご紹介します!

第一位  飯田泰之
    『マクロ経済学の核心』(光文社新書

また第六位にも『経済学講義』(ちくま新書)が同時入賞。

著者から投票してくださった方々へ

 業界内で次年度経済論壇のBest Biased Estimaterではないかと噂される「心に 残る経済書ベスト」の第一位に選ばれたとのこと,正直に大きな驚きです.といいますのも,第一位として上げていただきました『マクロ経済学の核心』 (光文社新書,以下『核心』),第六位の『経済学講義』(ちくま新書,以下 『講義』)ともに,私のオリジナルの知見をほとんど含まない,経済学の知見を できる限りそのままの形で伝えることを意図した書籍だからです.残念ながらランキングには入らなかった『これからの地域再生』(晶文社)が選ばれたとして もここまでは驚かなかったことでしょう.
 『核心』は,「何の変哲も無い」「親切すぎず,難解すぎない」マクロ経済学の 教科書を書くことを最優先して執筆しました.近年の経済学のテキストを見る と,計算問題の解き方から多彩な歴史的事例を含んだ「コレ一冊で全部OK」というものと,あまりにも読者の理解を求めない「コレぞ古き悪しき大学の教科書」という古式ゆかしい本に二分されているように感じます.そのなかで、「古き良 き大学の教科書」を書いてみたいというのが本書の執筆動機です.

ちなみに,本書は当初『飯田のミクロ』(光文社新書)の姉妹編として企画され,タイトルも『飯田のマクロ』となる予定でした.しかし,このタイトルでは より現代的で,より親切な入門書を想起させてしまうのでは無いかと思い……あえて手に取りづらいタイトルを選択させていただきました.

このような本を評価いただき,投票いただいた皆様には感謝しかありません.かつて一世を風靡した新古典派総合ケインジアンの思考法の基礎とその現代性を感 じていただければ幸いです.

 一方の『講義』は『核心』とは逆に,徹底的に親切な今風の経済学入門を意図して執筆しております.イメージとしては『講義』は大学の教養科目で非経済学部 の学生に向けて経済学のおもしろさを知ってもらう本,『核心』は経済学部の専 門科目としてはじめて本腰をいれて経済学を学ぶ人への本といったイメージで しょうか.

計量経済学に紙幅を裂いた点が『講義』のこだわりのポイントです.一生に一度しか経済学の講義を受けないという人に,経済学の論理の部分だけを教えると,「経済学は理屈だけの机上の空論のような学問だ」という印象を与えてしまいかねません.あらゆる経済理論はデータの洗礼を受けてこそ価値があるという点を入門の段階で知っておいて欲しいというのが,教師としての強い思いです.

栄えあるランキングに2冊同時に並べていただけること,実に光栄です.昨年ランキング一位を獲得した井上智洋氏はまさに2017年の経済論壇の中心となりまし た.別に注目されなくても良いので,来年の僕が今年の井上先生並に稼げることを祈念して,御礼の言葉に代えさせていただきたいと思います.

著者左、井上智洋氏(右)

マクロ経済学の核心 (光文社新書)

マクロ経済学の核心 (光文社新書)

第六位の『経済学講義』書影は下記掲載。

第二位 高橋洋一
   『99%の日本人がわかっていない国債の真実 』(あさ出版

また第十位にも『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)がランクイン。

著者から投票してくださった方々へ
経済書ランキングにおいて、ベスト10の2位と10位に選んでいただき光栄です。

2017年は10冊ほど新著を出しました。ベスト10の2位の『99%の日本人がわかっていない国債の真実』(あさ出版)と10位の『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)は好対照です。

『99%の日本人がわかっていない国債の真実』(あさ出版)は、国債というニッチな分野で長期的な啓蒙書です。私は、旧大蔵省理財局国債課で、企画担当課長補佐をした経験があるので、そのときの国債関係法令の知識や毎週の国債発行入札実務や国債整理基金オペ実務などをベースにした本です。入札や基金オペは、民間金融機関ディーラーと国債市場で対等の立場で取引を行います。市場の人々の間隙をついて、年間発行コストを1000億円ほど減少させたというのが、筆者の仕事自慢です(笑)。

民間ディーラーにとっては「イヤな人」だったと思います。また、そのとき、海外の発行当局の人との意見交換も貴重な経験でした。日本の国債整理基金(減債基金)が先進国では既になく化石のような存在であることも知りました。今でも、日本の財政学者が減債基金金科玉条のように説明するのは全く不勉強です。

 『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)は、10月の総選挙向けの短期的な時事問題を扱っています。10月出版なので、9月初めに原稿はほぼできています。そのとき、10月解散総選挙を予測していたので、なぜ総選挙なのかを書きましたが、出版社はギャンブル過ぎると難色を示しました。当たり前ですね、10月に総選挙がなければ、空振りで本は売れないからです。しかし、校正を進めていくうちに、書いてあることが次々に的中するので、最後は出版社が派手な広告などで逆にギャンブルした本です。小池新党がそのうち失墜するとも予測しています。結果はおかげさまで大当たりでした。これに慢心せずに、今後も予測の精度を高めるように精進します。

このほか、13位に『勇敢な日本経済論 (講談社現代新書) 』(講談社)、14位に『日本を救う最強の経済論』(扶桑社)、17位に『「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解』(ビジネス社)がランクインしました。私の書いた経済書をほとんど取り上げていただき、読者のかたに御礼申し上げます。

99%の日本人がわかっていない 国債の真実

99%の日本人がわかっていない 国債の真実

第三位 原田泰・片岡剛士・吉松崇(編著)安達誠司・嶋津洋樹・青木大樹・村上尚己・中川藍・宮嵜浩(著)
    『アベノミクスは進化する』(中央経済社



編著者から投票してくださった皆様へ
吉松崇さんから            
  多くの読者の方々に拙編著『アベノミクスは進化する』にご支持を頂き、誠に光栄に存じます。この本は、執筆者個々人の論文のアンソロジーの形をとっておりますが、あとがきに書きました通り、筆者たちは何度も集まってお互いの論文を批判的に検討し合い、また、アベノミクスに批判的な方々も勉強会にお招きして、そうした方々の論点についても更に再度検討を加える、というように、本の完成までにずいぶんと手間暇をかけました。こうした手続きにより、ある程度の練度は達成できたものと自負しております。執筆者グループは更に勉強会を継続しており、近いうちに、その成果を読者の皆さまにご提供できると思います。ご期待ください。

原田泰さんから            
  2015年の『ベーシックインカム』に引き続き、私の本を推薦していただきまして大変ありがとうございました。今回は編著ですので、執筆の皆様方とともに感謝いたします。
2013年からの大胆な金融緩和政策、リフレ政策によって、雇用、特に若い人の雇用が改善しています。ブラック企業がなくなった訳ではありませんが、状況は改善していると思います。
にもかかわらず、リフレ政策を非難する人は尽きません。このような非難がなぜ誤りなのかを、理論と事実によって示したのが本書です。非難している方々は納得いかないようですが、皆様には説得的と思っていただけたようで感謝しております。リフレ政策は、すべての人の利益となるものです。今や皆リフレ派だと言える世界を目指して、頑張っていきたいと思います。

片岡剛士さんから

アベノミクスは進化する」を推して頂いた皆様、誠にありがとうございました。
本書は原田泰さんの下に集ったエコノミストの皆様と共に、アベノミクスの第一の矢である「大胆な金融緩和政策」への様々な非難を統計と理論に基づき検討したものです。本書をご覧いただくと、「金融岩石理論」の何がどう問題なのかをよく知る事ができるのではないかと存じます。
なお、私が担当した第11章につきましては、新たに得た知見をもとにやや書き換えが必要かなと感じていますが、5年後に自由な立場になりましたら再び書いてみたいと存じます。是非ご期待ください!

アベノミクスは進化する

アベノミクスは進化する

第四位 安達誠司
   『ザ・トランポノミクス』(朝日新聞出版社)

著者から投票してくださった方々へ
1月10日という年初の発売にも関わらず多くの方に記憶にとどめていただき、本当に感謝いたします。本書はトランプの経済政策の見通しについて考察したものですが、個人的には空間経済学やFTPL的な考えなど、比較的新しい経済学の考え方を援用するという新しいアプローチで書かせていただいた本で、消化し切れていない部分もありますが、個人的には非常に思い入れが深い本です。本書では読者の方に上から目線で情報を提供するというよりも、読者の方と一緒に新しい経済書のあり方を考えるというのが主たる目的でしたが、読者の方におかれましても、マスコミの一方的な報道に踊らされることなく、ご自身で試行錯誤しながら考察するきっかけになれば幸いです。また来年はアベノミクスについて私なりの考えを本にさせていただく予定です。もしよろしければ来年もご購読いただければ幸いです。         

第五位 上念司
   『経済で読み解く織田信長 』(KKベストセラーズ

著者から投票してくださった方々へ
『経済で読み解く臨済宗』じゃなくて、織田信長への熱い一票ありがとうございました。
景気が悪くなると人はやぶれかぶれになって普段は見向きもされない危険な思想に救済を求めます。だから景気を悪くしてはいけない、ましてデフレにしてはいけないというメッセージが込められた本です。ところが、今の日本政府もこの歴史の教訓から何も学んでおりません。唯一分かっているのが総理大臣一人だけ。あとは全員緊縮派。これは困ったものです。一人でも多くの人に歴史の真実が届くことを希望します。今後ともよろしくお願いします。

第六位 飯田泰之
   『経済学講義』(ちくま新書

経済学講義 (ちくま新書1276)

経済学講義 (ちくま新書1276)

第七位 村上尚己
    『日本の正しい未来』(講談社+α新書

著者から投票してくださった方々へ
刊行一ヶ月未満で多くの方の支持を得られて光栄です。担当編集者からの提案で、近未来小説を冒頭に入れるなど、多くの人に伝わる分かりやすさが、良かったのかもしれません。リフレが普通の政策であることの世間の理解はまだまだなので、今後も頑張って参ります。

第八位 金子洋一
   『デフレ脱却戦記:消費増税をとめろ編』

著者から投票してくださった方々へ

有名著者が有名出版社から出した経済書を押しのけて、私がほそぼそと自費出版した本を応援してくださったみなさんが大勢いらっしゃったことに心から感謝します。この本は、私と安倍総理、黒田日銀総裁などの方々の消費増税をめぐっての国会審議に、バックグラウンドなどの解説を加えたものです。これまでありそうでなかった企画だと思っています。また、今回の当選(?)をきっかけに続編を書く意欲ももりもりとわいてきました。「デフレ脱却戦記2:日銀貴族を討て!編」(仮題)もご期待ください!今度は金融緩和を取り上げます。悪しき日銀を討て!!

第九位 森永卓郎
    『消費税は下げられる! 借金1000兆円の大嘘を暴く』(角川新書)



著者から投票してくださった方々へ

この本は、財政に関する常識を問う本です。批判を覚悟で、厳密な論証を行ったつもりでしたが大手メディアが採り上げてくれることは、ほとんどありませんでした。そんななかで、ランキングに入れていただいたことには、本当に感謝しています。これをきっかけに、一人でも多くの方に読んでいただいて日本財政の真実を知っていただければと思います。

第十位 高橋洋一
   『ついにあなたの賃金上昇が始まる! 』(悟空社)

ついにあなたの賃金上昇が始まる!

ついにあなたの賃金上昇が始まる!

以下、11位から20位まで紹介。

第11位 坂井豊貴
    『ミクロ経済学入門の入門』(岩波新書

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

第12位 鯨岡仁
    『日銀と政治 暗闘の20年史』(朝日新聞出版社)

日銀と政治 暗闘の20年史

日銀と政治 暗闘の20年史

第13位 高橋洋一&ぐっちーさん
    『勇敢な日本経済論』(講談社現代新書

勇敢な日本経済論 (講談社現代新書)

勇敢な日本経済論 (講談社現代新書)

第14位 高橋洋一
   『日本を救う最強の経済論』(扶桑社)

日本を救う最強の経済論

日本を救う最強の経済論

第15位 田代毅
   『日本経済 最後の戦略 債務と成長のジレンマを超えて 』(日本経済新聞社

第16位 デロング&コーエン
   『アメリカ経済政策入門』(みすず書房

アメリカ経済政策入門――建国から現在まで

アメリカ経済政策入門――建国から現在まで

第17位 高橋洋一
  『「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解』(ビジネス社)

「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解

「日経新聞」には絶対に載らない 日本の大正解

第17位 伊藤公一朗
 『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

第17位 上念司
『タダより高いものはない』(イースト新書)

第17位 アデア・ターナー
『債務、もしくは悪魔』(日経BP社)

債務、さもなくば悪魔 ヘリコプターマネーは世界を救うか?

債務、さもなくば悪魔 ヘリコプターマネーは世界を救うか?

以上です! コメント頂戴しました著者のみなさんに感謝申し上げます!

2018年がよい年になりますように! 日本と世界に安寧と繁栄を!

「アベノミクスはトリクルダウンを狙って一部の人にしか恩恵を与えない政策だ」と首相や浜田宏一先生を利用して嘘をつき続ける人たち

 アベノミクス、その中の金融緩和政策についての評価で、「アベノミクスはトリクルダウンを狙って一部の人にしか恩恵を与えない政策だ」というのが、繰り返し悪意、無知、そしてネットではここが多いがただの愉快犯という幼稚な心性で広まっている。正直、そこらへんのネットの愉快犯は無視して差し支えない。それに騙される人たちはググることさえもしないレベルなので、申し訳ないが自業自得である。

 ただもしこのブログに行きついた人がいれば、上記のような嘘に騙されないほうがいい。

 まずそもそも安倍首相自身がアベノミクスがトリクルダウンだということを否定している。以下は2015年の報道で、国会での発言から。動画もある。

 トリクルダウンでなく、経済の好循環目指す=安倍首相
https://jp.reuters.com/article/abe-economy-idJPKBN0L10CT20150128

 動画も

 さらに浜田宏一先生がアベノミクス初年度はトリクルダウンが生じたという発言を切り取って流布している悪質なツイートをしている人たちもいるが噴飯ものである。

 以下のエントリーでも書いたが、全体を底上げする政策なのでいろんな経路で好循環が発生する。その一部の評価で浜田先生はトリクルダウンが起きてるといったのだろう。いろんな方向から経済がよくなること、特に雇用についてはまさに下からよくなっている。

 このトリクルダウンについての我々リフレ派の共通理解は以下のエントリーにまとめた。

アベノミクスはトリクルダウンだ」説の間違い
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20170729#p1

 また最近では、僕は以下の動画でも解説している。動画の54分30秒から。無料なのでたまにはちゃんと動画ぐらいみたほうがいい。と書いても悪意と無理解の解消は無理なのがネット標準かな?

 正直、ネットの無理解や悪意などまったく関係なく、それに影響されることなく日銀が金融緩和を継続していれば、それで経済がよくなれば(悪意や嘘つきや幼稚な人たちが何を言おうが)大した問題ではない 笑。 

田中秀臣アベノミクス論 2017秋」
https://www.youtube.com/watch?v=7p5xWrvwApA

 例えば、トリクルダウンに厳しい態度をもつスティグリッツは、アベノミクスを支持している。アマルティア・センやトマ・ピケティらもだ。
 
まとめると、アベノミクスは経済を上からも下からも両方で改善し、それが消費増税の効果が顕著になる2014年1月までの高い経済成長をもたらしたといえるのである。そのため、トリクルダウン理論に手厳しいスティグリッツ氏ではあるが、アベノミクスの基本的な方向性には高い評価を与えている。

「安倍政権はGDP統計をかさ上げした疑惑がある」という奇妙な妄想をもつ人たち

 感情優位な人たち(アベノセイダーズ版)のひとつの最近のトレンドがあって、「アベ政権は都合のいいように基準を改定してGDPかさ上げした!」とかいうもの。

 これほどでたらめはなくて、そもそも基準は国際的標準、そしてその改定を決めたのは民主党政権なんだけど 笑。
 より正確にいえば、この種の統計は政治的な思惑とは無縁に、麻生政権→民主党政権→安倍政権と粛々とすすめていただけ。

 国際的標準の意味は、今回の「かさ上げ」の主因。つまり国際連合で加盟国合意の下採択された国民経済計算の最新の国際基準である「2008SNA」(研究・開発の資本化等)に対応しただけ。

 それに移行することは、今も書いたが民主党政権のときに実行を決めただけ。統計の改定には五年ぐらいはかかる。

 2008SNA対応の経緯(内閣府

 本当に感情優位の根はたたず。

 基準値改定はいまも書いたが、民主党政権のときに実行を決めたこと。民主党政権にももちろん政治的思惑はない。それ以前の自公政権ももちろん安倍政権も。

 そして旧基準と新基準を比べてみると、民主党政権の魔の数年間も旧基準よりも“まとも”=底上げ、されてる(笑)。以下は質問者2さんがついでに上げてた図表。

 そして現政権にとって都合がいいのか悪いのかわからないが、消費増税の影響は新基準でも鮮明だ。

 安倍嫌いが高じると本当に陰謀脳が機動するいい見本である。